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防災週間に考える②・・地震列島の“死角” 内陸「ひずみ集中帯」に注目

活断層ない所も

ひずみ集中帯で多く発生する地震。ひずみがたまりやすい(ひずみ速度が大きい)順に、赤色〜オレンジ色〜黄色〜緑色で示しています。☆は、1923年以降に発生した深さ20キロメートル以浅、M6・5以上の地震の震央。南海トラフ沿いのプレート間固着の影響を除去しています。(西村卓也さん提供)

 「内陸地震は活断層だけで起こるものではない。活断層がなくても、ひずみが大きい場所は活断層と同程度の危険性がある」

 京都大学防災研究所の西村卓也准教授は、日本列島の中でひずみがたまりやすい「ひずみ集中帯」に注目し、研究を進めています。

 日本列島は、太平洋側の海のプレート(岩板)が陸のプレートの下に沈み込んでいる影響で、ふだんから地殻変動が進んでいます。

 国土地理院は1990年代半ばから、GPSなどの衛星測位を利用した全国的な観測網(現在の基準点は約1300カ所)で地殻変動を監視しています。紀伊半島から四国にかけての地域が北西に最大で年間5センチメートル動いていること、2011年東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)で東北の沿岸域が東南東に5メートル以上動いたことなど、地殻変動の詳細がとらえられつつあります。

 地殻変動の進行が速くひずみの変化量が大きい、ひずみ集中帯の存在が指摘されたのは2000年ごろ。そこには活断層が多く、地震が多発していることがわかってきました。

 太平洋側には海溝型巨大地震に関連するひずみ集中帯が分布しています。内陸でも、淡路島から琵琶湖を通り新潟に延びる「新潟―神戸ひずみ集中帯」や、熊本から阿蘇、大分までの地域などにも集中帯がみられます。地殻変動の観測網整備後、おもな内陸直下型地震の多くが、ひずみ集中帯で起きることが分かっています。

 なぜ海のプレートから離れた内陸部にも、ひずみ集中帯が形成されるのでしょうか。

京都大学防災研究所の西村卓也准教授

 西村さんは、西日本の地殻変動データを分析。従来は1枚のプレートと考えられてきた西日本が複数の小さなプレートに分かれているとする「ブロック仮説」を提唱しました。ブロックが“一枚岩”のように動き、ブロック同士の境界付近にひずみ集中帯ができている、というのです。

 一方、これらのひずみ集中帯のなかには、活断層が存在しないところもあります。

 京都府北部から島根県東部にかけての山陰地方のひずみ集中帯。00年の鳥取県西部地震(M7・3)や16年の鳥取県中部地震(M6・6)など、大きな地震が起きています。西村さんは、過去の地震の“古傷”である活断層がみられないのは「断層がごく最近動き始めたと考えるのが自然だ」と話します。

 宮崎市から霧島を通って鹿児島・熊本の県境に延びる九州南部のひずみ集中帯では、小さな地震しか起こっていません。「ひずみは大きいのに活断層がないのが不思議だ。注意しておいた方がいい」

 地殻変動の精密測定が可能になって四半世紀。西村さんは「活断層は、何千年の過去の地殻変動を積み重ねたもの。過去と現在の地殻変動が同じとは限らない。現在進行形の地殻変動をとらえ、地震の予測に役立てたい」と話しています。

(しんぶん「赤旗」2018年9月2日より転載)