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トリチウム汚染水処分/他の放射性物質残留に疑念

福島第1原発の敷地内に並ぶ汚染水タンク群=2018年2月

解説

 東京電力福島第1原発で発生し続けている放射能汚染水から、水素の同位体であるトリチウム(3重水素)を取り除くのは、現在の技術では困難なため、タンクを増設してため続けています。トリチウム汚染水の貯蔵量は、現在約92万トンにのぼります。敷地確保が難しく、東電は2020年末までのタンク計画(総容量約137万トン)しか示せていません。

 東電によるとタンク内のトリチウム濃度は1リットル当たり数百万ベクレル。国の汚染水処理対策委員会の作業部会は2016年、国の放出基準(告示濃度限度=同6万ベクレル)以下に希釈して放出するなど五つの処分案の評価を示しました。

 1~4号機原子炉建屋の山側でくみ上げた地下水を海洋へ放出する場合は、同1500ベクレル。事故後に漁業関係者が苦渋の選択として受け入れた基準です。

 トリチウム汚染水の処分をめぐっては風評被害の懸念が大きく、漁業関係者をはじめ地元は海洋放出に強く反対。一方で原子力規制委員会は早くから、海洋放出を主張。東電は、国が処分方法を決めた上で判断するという姿勢です。

 今回の小委員会による公聴会の開催直前になり、多核種除去設備(アルプス)で処理してもトリチウム以外の放射性物質が基準値を超えて残っている汚染水の存在が表面化しました。東電は、アルプスで再度処理するなどの対応策を示していません。原子力規制委員会の更田豊志委員長が希釈して海洋放出することを容認する発言をしたことから、国と東電が最終的に海洋放出するのではないかと地元住民らは疑念を持っています。

 これまでの国の小委員会では、トリチウム以外の放射性物質について、ほとんど議論されていなかったことから、公聴会では議論を初めからやり直すべきだとの声も多数上がりました。

 事故やトラブルをめぐる隠蔽(いんぺい)や報告の遅滞など、これまでの東電の姿勢にも、地元住民は根深い不信感を持っています。事故を起こした当事者である東電は、柏崎刈羽原発(新潟県)再稼働や他の電力業者の原発への支援や提携よりも、被害賠償や廃炉作業に向き合うべきです。

 (唐沢俊治)

(「しんぶん赤旗」2018年8月31日より転載)