東北電力は12月27日、女川(おながわ)原発(宮城県女川町、石巻市)2号機の再稼働に向け、原子力規制委員会に新基準への適合性審査を申請しました。東日本大震災で被災した原発の申請は初めてです。
申請書を提出した東北電力の井上茂副社長は、「(原発は)環境性にすぐれている。これからも進めていく」など原発推進の姿勢を強調。2号機以外の1、3号機と、敷地内に活断層があるとされている東通原発(青森県)についても、再稼働申請に向けた準備を進めると説明しました。
女川原発は東日本大震災と翌月の余震で想定を超える揺れを観測、約13メートルの津波にも襲われました。外部電源5系統のうち4系統が遮断したほか、原子炉建屋が浸水し、冷却水のポンプも停止するなど、重大事故に「紙一重」の深刻な事態になりました。機器損傷やトラブルも600件を超えました。
申請にあたって、東北電力は、想定される地震の揺れを従来の580ガルから1000ガルに、想定する津波を従来の13・6メートルから23・1メートルに引き上げました。2016年3月までに高さ29メートルの防潮堤を完成させるとしています。
同電力は26日には女川町、石巻市、宮城県に安全対策を説明しましたが、3自治体とも慎重な態度を示しているなかでの申請です。
女川2号機は東京電力福島第1原発と同じ沸騰水型で、同型の申請は3件目。再稼働申請は全国の商業用原発48基(廃炉決定の福島第1原発1~6号機を除く)のうち、7電力会社9原発16基になりました。
世論踏みにじる・・高野博・日本共産党女川町議の話
世論調査で宮城県全体と女川町で6割以上が再稼働に反対です。人口約7300人の女川町では、2500人以上の町民が女川原発の再稼働反対の署名をしています。今回の申請は、こうした世論を踏みにじるものです。
女川原発は東日本大震災で被災した原発です。さらに、それまでの度重なる地震で、建屋の強度が低下するなど影響を受けています。今後も大きな地震が起きる可能性があり、福島第1原発のような事態になりかねません。
しかも、女川町では原子力災害時の避難計画がありません。こんな状態で、再稼働へつながる申請は撤回すべきです。
住民、東北電に抗議
東北電力(仙台市・海輪誠社長)が27日、女川原子力発電所2号機(石巻市・女川町)の新規制基準への適合性審査を原子力規制委員会に申請したことに対し、原発問題住民運動宮城県連絡センターと東日本大震災復旧・復興支援みやぎ県民センターは同日、東北電力に抗議の申し入れをしました。
各団体の代表15人が東北電力本店を訪れ、県民センターの綱島不二雄代表世話人が、応対した相沢利之広報・地域交流部課長に申し入れ書を手渡しました。
申し入れ書は、住民に対する説明なしに再稼働に向けた手続きを始めたことに厳しく抗議し、再稼働に反対する県民の思いを尊重し、原発から撤退することを要請しています。
綱島氏は「福島原発事故の原因も解明できていない段階での再稼働では、国民の不信感が募るばかりだ。われわれの意見を聞いて、再検討してほしい」と訴えました。
参加者から「女川は東日本大震災で被災した原発であり、影響が心配だ」「県民の6割が再稼働に反対していることをどう受けとめるのか」などの意見が出されました。
相沢氏は「真摯(しんし)に受けとめ、社長に伝える」と応えました。
要請には、日本共産党の横田有史県議が同席しました。