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石炭火力 推進の日本(下)・・成長戦略の柱に位置づけ

石炭からの離脱を求めてベルリン市内を行進するデモ=6月24日(伊藤寿庸撮影)

 海外の石炭火力発電事業への公的支援については、日本など一部の国が「いかなる規制にも反対」という立場をとり続けていました。国内外の強い批判を受け、2015年11月、経済協力開発機構(OECD)の輸出信用作業部会において、「気候変動対策の観点から、高効率の石炭火力発電技術のみ公的輸出信用の付与が認められる」合意をしました。

「規制」の抜け穴

 ところが、その内容には抜け穴があります。16年末までに入札が行われるものは規制対象外とする経過措置と、「低所得国、低電力化率国、島嶼(とうしょ)国」向けの発電容量の小さいものについてはCO2排出の多い設備も容認するものとなっています。

 今年4月、国際協力銀行(JBIC)が融資を決定したベトナムの石炭火力発電所は、「高効率」ではありませんが、日本政府は、先のOECDにおける合意の抜け穴を「活用」して、「問題ない」と開き直っています。

 安倍晋三内閣は、13年5月の経協インフラ戦略会議において「インフラシステム輸出戦略」を決定し、「2020年に約30兆円(10年の実績は約10兆円)のインフラシステム受注(事業投資による収入額等含む)」を成果目標として設定しました。

 16年のインフラシステム受注実績は約21兆円で、分野別では情報通信(9兆円)が最も多く、エネルギー(4・7兆円)が続きます。前年比では、エネルギー分野の増加(0・4兆円増)が寄与していると評価しています。

 また、首相によるトップセールスの実施件数は、13年以降は12年と比較して毎年3倍の伸びで、閣僚も含めると17年までで実に677件にものぼり、「総理・閣僚等による強力なトップセールス」と成果を強調しています。

内外の批判必至

 18年6月7日に決定した同戦略改訂版では、「先進的な低炭素技術の海外展開支援」として、高効率火力発電、原子力発電など「わが国が比較優位を有するインフラの海外展開を促進する」ため、「公的金融による支援を強化」すると明記しました。

 6月15日に閣議決定した「未来投資戦略2018」でも、「海外の成長市場の取り込み」において、「日本企業の国際展開支援」として、「電気・ガス事業者等多様な主体による国際展開」など「インフラ整備促進のため公的金融支援を強化する」と位置づけています。

 7月3日に閣議決定した第5次エネルギー基本計画においても、「インフラ輸出等を通じたエネルギー産業の国際展開の強化」として、高効率火力発電や原子力など「相手国のニーズに応じて、わが国の持つ優れた技術の幅広い選択肢を提案していく」としています。

 未曽有の原発事故を起こした日本が、原子力を「優れた技術」として輸出するなど論外です。また、石炭火力発電は最新のものであっても、パリ協定の2度目標と整合性はありません。今年2月、外務省の「気候変動に関する有識者会合」は、「石炭火力輸出への公的支援は速やかな停止をめざす」と提言。環境省のESG(環境・社会・ガバナンス)金融懇談会でも、今年6月、「議論の整理」として、「わが国金融業界においても、世界の潮流と危機感を共有すべき」だとしています。

 来年6月には、日本が議長国となって、主要国に新興国を加えた20カ国・地域(G20)の会議が開催されます。「先進的な低炭素技術」として、海外での石炭火力発電を推し進める日本政府に対し、国際社会の批判がますます厳しくなることは必至です。途上国への支援はエネルギー効率化と再生可能エネルギー開発中心へと転換していくべきです。

 (おわり)

(「しんぶん赤旗」2018年7月18日より転載)