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石炭火力 推進の日本(上)・・公的金融で海外事業支援

石炭火力拡張計画への融資撤回を訴えるインドネシア現地住民ら=2017年12月5日、東京都内

 世界で脱炭素化の動きが加速しているもとで、海外での石炭火力発電事業への支援を強めている日本政府に対し、国際的な批判が強まっています。実態と問題点をみました。

 (日本共産党国会議員団事務局 安部由美子)

 2013~16年の海外での石炭火力発電事業への日本の公的金融機関の支援額は、約1・1兆円で中国に次いで多く、続くドイツ、ロシアを大きく引き離し、世界で突出しています。

 そのうち、日本政府が100%出資する国際協力銀行(JBIC)による事業実施者への融資・保証金額(2013~16年度)は約0・8兆円でドイツ、ロシアの支援額の合計より多くなっています。また、100%政府出資の日本貿易保険(NEXI)による事業への融資を行う銀行、出資する企業に対する保険引き受け金額は約0・3兆円で、ロシアの支援額より多くなっています。

各国で投資撤退

 16年に発効したパリ協定では、世界の平均気温上昇を産業革命前に比べて2度より低く保ち、1・5度に抑える目標が明記されました。国連「持続可能な開発目標」の発効(16年)も受けて、世界ではイギリス、カナダなど28カ国と米国のカリフォルニア州など8地方政府・自治体が「脱石炭」を目標に掲げています。

 世界銀行や欧州投資銀行などの国際投融資機関、世界有数の政府系投資ファンドであるノルウェー政府年金基金などが、「気候変動や資産運用の観点から石炭関連への投資はリスクが高い」と位置づけ、相次いで、石炭関連事業への投資からの撤退を開始しています。

 日本共産党の岩渕友参院議員は6月19日の経済産業委員会で、こうした事実を示し、世界の流れに逆行して、海外での石炭火力発電所建設を推進する役割を果たしている日本政府の姿勢を厳しく批判しました。世耕弘成経済産業相は、「国際的に、OECD(経済協力開発機構)で議論し、質の高い石炭火力には公的金融を提供できる合意がされている」とし、「途上国などのエネルギー事情、要請に応じて対応している」と言い訳に終始しました。

地元住民が反対

 輸出支援の対象にしている日本のインフラについて、日本政府は、「質が高い」「相手国の要請」などと言います。しかし、インドネシアでは、石炭火力発電事業・拡張計画に対し、地域住民の強い反対が続いています。これまでも、現地の住民、非政府組織(NGO)、弁護士がたびたび来日し、今年5月18日にも現地から関係者が来日し、首相、財務相、経済産業相、環境相、国際協力銀行総裁、日本貿易保険社長あてに要請書を提出しています。これには、国際環境NGOのFoEジャパンなど40カ国の171団体が署名しています。

 このなかでは、地域社会が行政訴訟を起こし、現在も訴訟が継続していること、地元の農民や漁民に対して生計手段の改善、回復のための適切な対策が欠如していること、さらに声をあげているメンバーに対する嫌がらせや監視などの人権侵害が起こっている深刻な実態を示し、「日本政府はインドネシア・西ジャワ州チレボンおよびインドラマユ石炭火力発電所への融資を停止すべきだ」と強く訴えています。(つづく)

 (2回連載です)

(「しんぶん赤旗」2018年7月17日より転載)