11月下旬に運転40年を迎える老朽原発の日本原子力発電東海第2原発(茨城県東海村)について、原子力規制委員会は7月4日の定例会合で、新規制基準に適合したとする「審査書案」を了承しました。傍聴席から「スケジュールありきの審査だ」「電気は足りている」などの声が上がり、規制委の会合が開かれた東京都港区のビル前でも市民団体が「再稼働反対」「運転延長反対」と抗議しました。
同原発は首都圏で唯一の原発。避難計画の策定を義務づけられた半径30キロ圏には最多の96万人が住み、重大事故時の住民避難計画の実効性など課題が置き去りです。
審査書案の取りまとめは、東日本大震災で地震と津波で被災した原発で初。事故を起こした東京電力福島第1原発と同じ沸騰水型としては東電柏崎刈羽原発6、7号機(新潟県)に次いで2例目で、8原発15基目になります。審査書案は5日から1カ月、一般から意見募集を行います。
東海第2が運転を続けるためには、運転期限の11月下旬までに新規制基準とは別に、運転延長の認可と、設備の詳細設計を記した工事計画の認可を得る必要があり、得られなければ廃炉になります。
認可後も地元同意が必要で、原電は3月、県や立地する東海村に加え、水戸市など周辺5市との間で再稼働の事前了解を得るとの協定を結んでいます。
審査では、防潮堤の液状化対策などで膨らんだ約1740億円の工事費用を負担できる経営基盤が原電にあるかどうかも対象に。原電が賄えない分について、送電先の東京電力と東北電力が支援の意思を示す書面を提出。規制委は、東電を監督する経済産業相に対し、福島第1原発の廃炉などに支障がないか見解を求めることを決めました。
(「しんぶん赤旗」2018年7月5日より転載)
原発推進に追従 規制委も司法も・・東海第2 問題山積で“ゴーサイン”
原子力規制委員会が再稼働にむけて事実上の“ゴーサイン”を出した日本原子力発電(原電)東海第2原発(茨城県東海村)。2011年の東日本大震災の際、地震で外部からの電源供給が途絶えたうえに、津波で非常用発電機3台のうち1台がポンプの水没で停止し、間一髪で重大事故を免れた被災原発です。しかも11月に運転40年を迎える老朽原発でもあり、地元の住民らも「まさか、動かすとは思っていなかった」「許せない」と声をあげています。問題は山積しています。
(「原発」取材班)
96万人の避難計画
首都圏に立地する東海第2原発。避難計画を策定し、重大事故の際には屋内退避などの防護措置を行う「緊急防護措置を準備する区域」(原発から30キロ圏内)だけでも、14市町村、住民は96万人に上ります。
避難計画の策定を終えたのは、14市町村のうち笠間市、常陸太田市、常陸大宮市のみ。具体的な計画の策定は困難であり、計画を立てても実効性のあるものにはなりえないと指摘されています。
原電は3月、再稼働する際、立地する東海村のほか、水戸市など周辺5市からも事前の了解を得ると協定を結んでいます。
一方、県内各地では「延長反対」などの意見書が可決されています。県都の水戸市議会は、広域避難計画の策定が不十分だと指摘。再稼働を前提とした運転延長は認められないとする「住民理解のない再稼働を認めないことを求める意見書」を可決し、国や県に提出しています。
こうした声に真摯(しんし)に向き合うなら、再稼働などありえません。
老朽化でガタガタ
東海第2原発が運転を開始したのは1978年。老朽原発に特有の問題などが審査の焦点になりました。
規制委の審査では、同原発が古い設計のため、施設内の電気ケーブル(約1万8500メートル)について、新規制基準が求めている難燃性の(燃えにくい)素材のものが使われておらず、防火対策の課題として焦点となりました。ケーブルを交換せずに、結局は防火塗料を塗ったり防火シートで被う対策をすることで、規制委はよしとしました。この対応も問われます。
東海第2は、巨大津波への対策が、他の原発の審査と比べて、とくに大きな問題になりました。
想定する津波の高さは、敷地前面で最大17・9メートルとされ、原電は、高さ20メートルの防潮堤を建設するとしています。防潮堤の液状化対策のために地盤を改良する工事を実施したり、防潮壁を支えるくいを地下約60メートルまで打ち込むために、対策費用が膨らみました。
そもそも、本来は原則40年としている原発の運転期間を20年も延長すれば、放射線照射で原子炉がもろくなるなど、機器・配管の劣化は避けられません。
老朽原発の酷使は、やめるべきです。
資金支援 東電が!
東海第2の再稼働に必要な安全対策工事費は、1740億円に上ると見積もられています。福島第1原発事故を起こした東京電力が資金支援すると表明したことにも、批判の声が上がっています。
原発専業の原電は福島第1原発事故後、保有する4基の原発が停止し電気を販売できないため、工事資金を自力調達できず、東電に電気料金前払いや債務保証などの資金支援を要請。これに対して、東電は「東海第2からの受電は有望」などとして資金支援を表明しました。
事故を引き起こした加害企業である東電による被害者への賠償は遅れています。東電の態度は「賠償と廃炉の責任を果たすことを優先すべきだ」「他社の原発再稼働を支援する資格はない」と、国民の怒りを呼んでいます。
(「しんぶん赤旗」2018年7月5日より転載)