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火山と原発・・矛盾する規制委「基本的考え方」一度否定された理屈/活断層と同様の判断が必要

 原子力規制委員会が作成した、火山影響評価ガイドにおける巨大噴火に関する「基本的考え方」について、前火山噴火予知連絡会会長の藤井敏嗣氏に聞きました。

前火山噴火予知連絡会会長 藤井敏嗣さんに聞く

 ―巨大噴火のリスクの水準は、法規制や防災対策が原子力規制以外の分野で行われていないから「社会通念上容認される」のでしょうか。

 法規制や防災対策が原子力規制以外で行われていないから、社会通念上容認されるということ自体がおかしい。

 巨大噴火に対する防災対策がないのは、分かっていないからです。対策はやらなくてはいけませんが、データが無いので、現在は調査から始めなくてはいけないのです。このことは、内閣府などが設置した検討会で私か座長としてまとめた「大規模火山災害対策への提言」(2013年)でも指摘しています。

 将来、日本に巨大噴火が発生することは確かです。それが10年先なのか100年先なのかは分からないけれど、何千年も先ということはたぶんないでしょう。子孫、あるいはわれわれ自身が被害を受けるかもしれない。だから提言では、巨大噴火について周知が必要とも書いています。

判定自体が不可能

 ―「(原発の)運用期間中に巨大噴火が発生するという科学的に合理性のある具体的な根拠」が示される可能性はあるのでしょうか?

 現時点では、運用期間中に発生するとか、しないとかの判定そのものが不可能です。

 研究が進めばいつごろどういうふうにして巨大噴火が起こるのか、ある程度のことが言えるようになるかもしれません。問題はあくまでも地質学的な調査なので、年代を細かく決められないことです。古記録が残っていない時代は、数十年から数千年ぐらいの誤差があります。そういうものに基づくので、原発の運用期間の40年が安全とか安全でないとか、言うことができないのです。

 ―規制委の更田豊志委員長は、巨大噴火について「極めて頻度が低いことは分かっているけれど、統計的な処理をするようなデータがないので確率で語ることは難しい」と述べています。また、原子力工学の世界では、1000万年に1回以下の事象は切り捨てて考えてもいいという考え方があります。

 確かに巨大噴火の発生確率について、背後にある過程が分かってないので決められません。しかし、1000万年に1回と比べれば、はるかに巨大噴火の方が、出現率が高いです。

 噴出物が数十立方キロ程度を超える噴火なら、日本全体で過去12万年間に18回です。

 12~13万年以降というのは、日本列島の地質学的スキーム(特徴)が今も継続しています。日本の最新のカルデラを形成する巨大噴火からは既に約7300年経過していますが、同様の発生頻度が継続していると考えられるのです。

  ―13万年以降に火砕流の影響を受けたことのある地域は、今後、火砕流の影響を受ける可能性は1000万年に1回より低くはならないのでは。

 それは言えます。頻度という意味ならば十分言えることです。

 それからカルデラ噴火を複数回したときの繰り返し期間も分かっていて、一つのカルデラで見ると最短で約2000年、最長で約9万年です。

 規制委は、活断層の場合は13万年以内に動いていれば活断層とみなし、真上に原発の重要施設を造ってはいけないとしています。その態度は正しいと思います。

 13万年以内に、カルデラ噴火も繰り返し起こっています。13万年以内に火砕流が到達した場所にある原発も止めるという、活断層と同様の判断をすべきだと思います。

新″神話″のおそれ

 ―「考え方」は火山ガイドに沿っているものですか?

 違います。この「考え方」と火山ガイドは矛盾しています。

 伊方原発の運転差し止めを命じた広島高裁の決定(2017年12月)の方がはるかに正しいです。そこで否定された理屈を、「考え方」が引っ張りだしているのです。

 原子力の新しい神話をつくることになるのでそれだけはやめてほしいと思いますね。     (おわり)

(「しんぶん赤旗」2018年6月19日より転載)