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東電柏崎刈羽原発 液状化の恐れ・・フィルターベンド損傷可能性/住民・専門家「設置変更許可取り消せ」

 東京電力柏崎刈羽原発6、7号機(新潟県)の設置変更申請を原子力規制委員会が昨年末に許可した後になって、東電が重要施設のフィルターベンドの基礎などに液状化の影響を受ける可能性があるため、追加工事の予定があると発表しました。地元住民をはじめ専門家から「審査をやり直せ」と批判の声が上がっています。(松沼環)

  安全上の重要施設

東京電力柏崎刈羽原発(新潟県)

 規制委が新規制基準に適合しているとして、基本設計や対策方針に関する設置変更許可を出したのは、昨年12月27日でした。ところが今年2月になって東電は、6、7号機の重要施設であるフィルターベンドの基礎やガスタービン発電機の基礎、さらに原子炉の冷却のための水を取り込む取水路が地震時の液状化で損傷する可能性があるとして、補強工事を行う方針を発表しました。フィルターベンドは重大事故が起きたとき、原子炉格納容器の圧力を逃がすための設備で、機能を失えば深刻な事態になりかねません。

 規制委の更田(ふけた)豊志委員長は、この問題について5月の会見で「許可前の審査会合の資料ですでに液状化については触れられ、液状化の可能性があれば対策をとりますとある」と述べ、許可後に分かったことではないと説明し、問題はないとしています。

 実際、この問題が扱われたのは昨年1月の審査会合です。東電が規制委に提出した資料には「液状化評価の対象設備」のリストに、フィルターベントなどが含まれていました。

 しかし、東電は、リストにある設備すべてを具体的に評価してはいません。フィルターベントの基礎については、構造が類似するガスタービン発電機の燃料タンクの基礎を代表構造物として選定し、評価。結果は「十分な構造強度を有している見通しを得た」というものでした。

 さらに許可直前の昨年12月22日に、東電が規制委に提出した資料もこルターベントやガスタービン発電機などの「施設の安全性に影響を及はさない」と明記しています。

 しかし、約2ヵ月後には液状化対策が必要になりました。なぜか。

 東電に取材したところ、許可段階の審査は、燃料タンクの基礎単体で評価したことで問題はなかったが、ガスタービン発電機の基礎全体を解析したところ「弱さが出るのではないかという評価」が得られたと説明。フィルターベンドの基礎などを含めたこうした評価を得たのは、2月上旬だといいます。また、いずれの施設も「(詳細設計に関する)工事計画で審査されるものであり、評価は継続中」といいます。

  結論間違っていた

 旧原子力安全委員会事務局の元技術参与・滝谷紘一氏は「東電が設置変更許可段階で示した結論は、フィルターベンドの基礎を含む施設について液状化によって『施設の安全性に影響を及ぼさない』というものです。この結論が違っていたのですから、規制委は許可を取り消して、東電に対して申請書を再提出させるべきです」と述べ、規制委の対応を批判します。

 先月開かれた柏崎刈羽原発6、7号機の設置変更許可について規制庁が地元に初めて説明した説明会でも、「許可を取り消すべきだ」「規制委は審査で重要なことを見過ごしているのではないか」などの批判の声が住民から上がりました。

 東電はこれまでも、問題はないと説明していた液状化の影響で防潮堤の一部が壊れる可能性があることを審査途中で認め、緊急時対策所を変更。また、事故時の対応拠点としていた免震重要棟が、それまでの説明と異なり想定される地震の揺れに耐えられないと、審査の終盤で認めるなどの対応を繰り返してきました。東電が原子力事業者としての適格性を持つとした規制委の審査のあり方がいっそう問われています。

(「しんぶん赤旗」2018年6月6日より転載)