山形・米沢市
東京電力福島第1原発事故によって福島県内の避難指示区域外から山形県米沢市の雇用促進住宅に自主避難した8家族が、裁判に訴えられ立ち退きと家賃の支払いを迫られています。突如被告になった避難者は、住宅と生活を確保するためにたたかっています。(山形県・佐藤誠一)
背後に国・福島県
昨年9月に裁判に訴えたのは、独立行政法人の高齢・障害・求職責雇用支援機構です。しかし実質的には提訴の背後には、被災者切り捨てを進める国と福島県がいることは明らかです。
この雇用促進住宅は、2011年の震災直後に米沢市が避難所として提供していましたが、同年4月に福島県が一括借り上げして避難者に提供したものです。
ところが福島県は昨年3月で、住宅の無償提供を廃止しました。
福島県は12年に、山形県を含む県外への入居者の新規受け入れストップを国に表明しています。民間アパート入居の避難者への家賃補助も19年度末に打ち切る予定で、20年には「避難者数ゼロ」にするとしています。
有償契約に応じなかった家族を裁判に―という行政の対応に、被告の一人、武田徹さん(77)=かつて福島市在住=は「私たちは一方的に退去を通告されるなど、蚊帳の外におかれてきた」と怒りをあらわにします。
「裁判応援したい」
被災者や支援者たちは、行政の冷たい対応に不信と不安を募らせています。
米沢市の万世(ばんせい)コミュニティーセンターで開かれている避難者向けのお茶会「きっさ万世」。「生活クラブやまがた」代表の石田光子さんと澤田美恵子さんが震災直後から始め、毎週水曜日に開かれています。ここに通う70代のA子さんは、夫が11年5月に死亡し、―人で雇用促進住宅に住んでいます。娘夫婦と孫2入は別世帯として入居しています。
「自営業の娘夫婦は県境を越えて5年間福島県北部の元の店に通ったが、現在は米沢市内に転職した。うちは昨年4月から、2世帯合わせて月8万円の新たな家賃負担を内容とする契約にしぶしぶ応じた」とつらい思いを語ります。「今でも大きな声で“私は避難者”とはいえないけど、裁判をしている人を応援したい」と話します。
米沢市の「避難者支援センターおいで」の上野寛さんは、「米沢市内の避難者数は11年11月のピーク時に3895人、今年3月でも162世帯、478人いる」と指摘します。福島県南相馬市で生花店を営んでいましたが、津波被害にあい、米沢に避難して、「おいで」で働いています。
「国、東電は避難者の心に寄り添った支援をする責任がある。県外からの避難者への支援は、原発事故が収束していないので『災害救助法』(応急救助)では限界がある。何よりも『原子力災害救助法の制定』を求めている」と訴えます。
被告の武田さんは20日、山形県酒田市で開かれた集会で語りました。「私たちは訴えられたが、何も悪いことはしていない。自治会をつくって相互理解を深め、家賃を払って被告にならなかった人たちとも連帯している。多くの支援者とともに裁判をたたかっていきます」
(「しんぶん赤旗」2018年4月26日より転載)