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大飯再稼働させない「事故が起これば故郷失う」・・野党の原発ゼロ共闘に期待/福井・近畿で声あげる思い

 東京電力福島原発事故から7年。原子力規制委員会の「新規制基準の適合」をよりどころに原発再稼働に走る安倍政権へ批判が強まり、野党の″原発ゼロ法案共闘″への期待が広がっています。福島に連帯し、原発が密集する福井・若狭での原発再稼働は許さないと近畿と福井でたたかう人たちの思いを追いました。

(阿部活士)

 「重大な事故を起こせば故郷に住めなくなる原発。今すぐ廃炉にしましょう」。小浜市内の住宅地に女性の声が響きます。

 3・11を前にした2月の「大飯原発うごかすな」実行委員会が主催する、いっせい宣伝・アメーバデモです。

 ある男性が話したそうにビラを受け取りました。「仕事、名前は言えないが、65歳だ」と不安を訴えます。「半減期が30万年もあるような原発(放射線)。大都会の電気になるこんな危険なものを田舎に押し付けていることを考えてほしい。あんな危険なものはないにこしたことはない」

 実行委は、滋賀県高島市、京都府舞鶴市と福井県内六つの市町村で組をつくってビラをまきながら住民と対話しました。「ビラをとらないという人がほとんどいない。これは原発再稼働への隠れた不安・反対の声だと思う」。こう話すのは、実行委員会を構成する「若狭の原発を考える会」共同代表の木原壮林さん。

 福井県の明通寺住職、中嶌哲演さんをはじめ地元や近畿圏などから120人が行動しました。一番若い参加者は、神戸からきた久保田美穂さん(35)。「原発事故・放射能汚染という公害は、自然界を壊し、人間の手にはおえない。だれかが踏みにじられるのはいや。だから、それを変えていきたい」と目を輝かせます。

汚染一定でない

 東京電力福島原発事故では、放射能汚染は同心円状に広がりませんでした。50キロ離れた飯舘村が全村避難しました。線量の高いホットスポットは、100キロ近く離れた首都圏各地でも生みました。大飯原発や高浜原発から50キロ圏内には京都市、福知山市、高島市の多くの区域が含まれます。

 しかし、政府は福島原発事故を教訓とせず、再稼働にたいする同意は立地自治体と立地道府県に限ったままです。一方、政府の原子力災害対策指針に基づく地域防災計画・避難計画は、理由を明示せず「30キロ圏内の自治体」に策定するように求めています。

 内閣府が昨年(2017年)10月25日に開いた「福井エリア地域原子力防災協議会」で「実効性ある多重防護体制の構築は道半ばであり、再稼働を容認できる環境にはない」と主張したのは、福井の隣県・滋賀県です。滋賀県原子力防災室防災危機管理監の松野克樹さんは、実効性ある多重防護体制について「オンサイト(発電所)だけでなくオフサイト(周辺)対策、ハード整備のみならず避難などソフト対策、立地自治体だけでなく最低30キロ圏内自治体との連携・協力体制」を挙げ、「どれも、任意でなく法で定めることを求めている」と説明します。

滋賀全域に及ぶ

 滋賀県は、福島事故をうけて地域防災計画(原子力災害対策編)の修正にあたり、放射性プルーム(放射性雲)通過時の放射性物質拡散予測結果(図参照)を発表しています。甲状腺等価線量が50ミリシーベルトを超える地域がおおむね滋賀県全域におよびます。100ミリシーベルト以上500ミリシーベルト未満になる汚染地域は、同心円に広がっていません。

 市民による避難計画を検証する取り組みもあります。

 「ばいばい原発守ろう命とびわ湖高島連絡会」の事務局を担当する中平清三さんは、避難計画を案ずる関西連絡会のメンバーと一緒に、大飯原発から30キロ圏内にある高島市朽木地区などの集落を訪問し、聞き取り調査しました。「台風など天災で一時的に孤立するが、逃げなくても食料も沢水もあるので何日でも大丈夫だ。しかし原発の事故、目に見えない、においもない放射能はどうにもならん。食料も水も汚される。再稼働は反対だ」と話す住民がかなりいたといいます。

 原発事故・放射能汚染の福島から避難した人たちも、再稼働に反対します。福島敦子さんもその一人です。3月15日に京都地裁で判決を迎える原発賠償京都訴訟の原告団共同代表で、大飯原発差止訴訟・京都脱原発原営団の世話人を務めます。

人間に扱えない

 あの日、小学3年と5年の子どもを連れて、自宅の南相馬市から飯舘村や福島市の温泉場で3週間避難。4月の新学期を前に子どものために友人の情報を頼りに京都に避難しました。「原発は、福島事故で人間の技術では扱えないものだとはっきりしました。放出した放射能汚染は世界最大級の公害事件です。京都に避難できたことに恩返ししたい。避難者としてやるべきことは原発を止めることです」

 被爆70年の3年前、広島を訪問した敦子さん。被爆者から「バクの字が違うけど、がんばって」と激励されました。

 「2011年以降、日本はすごく変わったと思う。コツコツとやってきた市民運動とともに、いろんなネットワークが出てきて″原発いらない″の大きな民意につながっている。その起爆剤になったのが避難者だと自負しています。

声をあげ行動を続けたい」

安倍政権退陣を

 「2018年を原発のない社会をつくる元年にしたい」と話すのは、京都・福知山地方労働組合協議会議長の奥井正美さんです。毎週JR福知山駅前で原発いらない金曜行動を続けてきました。フクシマを忘れない! 若狭の原発みんなで止めよう」をスローガンに「さよなら原発京都北部集会」を10日福知山市内で400人が参加して開きました。

 奥井さんは、今後の決意を語ります。「福井のみなさんは『原発事故は、福島の後は福井かな』と不安と再稼働に怒りを持っています。その思いを共有しながら、野党の原発ゼロ共闘に運動する地域の運動を強めたい。安倍政権を退陣させたい」

(「しんぶん赤旗」2018年3月11日より転載)