東日本大震災の発生から7年です。大きな揺れと巨大津波、そして東京電力福島第1原発事故が重なった未曽有の「複合災害」に襲われた被災地の現状は、いまも深刻です。鉄道や国道の復旧、災害公営住宅の建設などはすすんできたものの、被災者の生活と生業(なりわい)の再建は遅々としており、避難生活の長期化や人口流出の進行などさまざまな困難に直面しています。被災者は元の暮らしを取り戻そうと努力を続けていますが、一人ひとりの力には限界があります。国や自治体は被災者の切実な願いに応え、思いに寄り添った支援を強めることが求められます。
増加してきた「孤独死」
震災発生から7年―。津波に襲われた地域では、盛り土によるかさ上げ工事が終わるなどしましたが、町の中心部でも空き地が目立ちます。元いた場所に戻った人たちも周囲に人が少なく復興がすすんでいる実感は持てません。
家を失った人に対する災害公営住宅は岩手、宮城、福島の3県で目標の約9割が整備されました。その一方で、同住宅では亡くなった状態で発見される「孤独死」が年々増えていることが大きな問題になっています。昨年は3県で53人に上りました。65歳以上の高齢者が約4割を占めていることに加え、住民同士のつながりが弱いところでは隣人の様子がわかりにくい状況におかれているためです。若い世代も含む地域のコミュニケーションをどうつくり、どのように維持していくのか。災害発生直後と異なる課題となっています。自治会や町内会の活動を支えるなどきめ細かな援助が重要です。
健康を崩しがちな被災者にとって医療・介護体制を整えることは不可欠ですが、医師や看護師、介護職員不足で充実ができません。手だてを講ずることが必要です。
収入が少なく生活が安定しない被災者には、災害公営住宅の家賃補助、医療費負担や介護保険利用料の減免措置などは“命綱”です。国は自治体への財政支援などを再開・拡充すべきです。被災者に貸し付けられた災害援護資金の返済困難者への猶予措置なども求められます。
もともと過疎化が進んでいた被災地では、人口減少への対策はどこでも大問題です。若者定住へ雇用促進住宅を低額で提供している自治体もありますが、「戸数がとても間に合わないが、財源がない」と国の支援を強く求めています。
安倍晋三政権が「復興・創生期間」を2020年度末までとして、復興・支援の打ち切りと縮小に踏み出していることは重大です。被災地はまだまだ震災前の状況には戻れていません。被災者と自治体が復興に向け必死の努力を続けているときに、国が手を引くなど許されません。
福島切り捨てをやめよ
福島県では県発表でも約5万人が避難生活を強いられていることは、原発事故の過酷な実態を示しています。“自主避難者”も数多くいます。「被害は進行中」というのが現実です。
安倍政権が“自主避難者”への住宅支援を打ち切り、東電が賠償を終わらせたりすることは原発被害者に新たな苦難を強いるものです。被害者を分断する線引きや切り捨てをやめ、全ての被害者の生活と生業が再建されるまで国と東電は責任を果たすべきです。
(「しんぶん赤旗」2018年3月11日より転載)
東日本大震災から7年を迎えるにあたって
2018年3月11日 日本共産党幹部会委員長 志位和夫
東日本大震災と東京電力福島原発事故から7年が経過したこの日を迎え、あらためて犠牲となられた方々に哀悼の意を表するとともに、被災者のみなさんにお見舞い申し上げます。復興に向けて懸命の努力を続けておられる被災者のみなさん、自治体のみなさん、そして、被災地への支援を続けておられる全国のみなさんに、心からの敬意を表します。日本共産党は、被災者の生活と生業(なりわい)を再建し、復興を成し遂げるまで、国民のみなさんとともに全力をあげる決意をあらたにします。
1、 被災者の生活と生業の再建、被災地の復興に、最後まで国が責任をはたす
今でも、3万8500人の被災者が不自由な仮設住宅での暮らしを余儀なくされるなど、被災者の生活と生業の再建、コミュニティーの再生など、被災地の復興は道半ばです。被災から長い時間が経過したことによる新たな困難も加わり、被災者の暮らしと健康への不安は深刻です。ところが、国は「復興期間」を2020年度までの10年間として、復興策の打ち切りと縮小に踏み出しています。
被害が大きかった地域ほど復興には困難も大きく時間もかかります。期限を切っての支援策の打ち切り・縮小は、被害の大きかった地域を切り捨て、被災者を置き去りにすることであり、絶対にやってはなりません。
医療・介護の減免措置を国の負担で行う仕組みとして再開・拡充する、災害公営住宅に対する国の減免を継続する、被災からの再建途上であることを無視した一方的な家賃値上げをやめる、仮設住宅からの「追い出し」が起きないようにする、2018年度末となっている仮設施設・店舗の「使用期限」を延長することを求めます。仮設住宅や災害公営住宅での孤立化を防ぐ見守りや子どもたちを含めた心のケア対策を強化する、災害援護資金の返済困難な被災者への猶予措置、被災者の生活の足である公共交通の確保、応援職員の継続確保に取り組むなど、国が被災地の要望に応え、最後まで責任をはたすことを求めます。
2、 東日本大震災の教訓を生かし、国の復旧・復興支援策の抜本的な強化を
東日本大震災は、被災者の住宅再建をはじめ、甚大な被害を受けた被災地の復興に対する国の支援策、制度がきわめて不十分であることを露呈しました。
住宅再建への支援金は額が少ないだけでなく対象も狭く被災者の一部にしか支援が届いていません。市街地や商店街の復興、中小企業・小規模事業所の再建を支援するまともな制度がなく、被災者の運動や関係者の努力でグループ補助金などが実現しましたが、本格的な支援制度の確立が求められています。東日本大震災後も、熊本地震をはじめ台風や集中豪雨など、大きな被害をもたらした災害が起きていますが、同じ問題、同じ苦しみが被災者にのしかかっています。
国が、東日本大震災の総括と反省を踏まえ、法整備を含めた対策を抜本的に強化することを求めます。とくに、住宅再建への支援を500万円に引き上げ、対象も半壊・一部損壊などに広げる、二重ローン問題の解決を含め生業の再建を本格的に支援する制度、被災地での中小企業・小規模事業者に対する個別支援制度を創設することが必要です。それは災害列島の日本で国民の命と財産を守る政治の責任です。
3、 原発推進と一体の福島切り捨てを許さず、原発ゼロの日本へ
福島では、昨年3月末、帰還困難区域以外の地域で避難指示が一部を除き解除されました。しかし、戻った住民はわずかで、県の発表でも約5万人が避難を強いられています。実際にふるさとに帰れない避難者は県発表を大きく上回ります。原発事故関連死者数は2211人に達し、直接死1605人をはるかにこえて増え続けています。
それにもかかわらず、安倍政権は“自主避難者”への住宅支援を昨年3月末で打ちきり、精神的苦痛への賠償も今年3月末で終了しようとしています。営業損害賠償も打ち切りがすすめられています。昨年、福島地裁、千葉地裁は、被害者が起こした損害賠償請求裁判の判決で、「ふるさとの喪失」や「平穏な生活権を侵害」された賠償を認めました。ふるさとと平穏な生活を奪った原発事故への賠償を一方的に打ち切ることは許されません。「復興加速」の看板のもとに、被害者切り捨てをすすめる安倍政権こそ福島復興の最大の障害です。
東京電力は、事故収束、賠償など加害者としての最低限の責任すら果たさないまま、川村隆会長が、「この先20年というオーダーで使えそうなのは柏崎刈羽原発と福島第2原発」と述べるなど、福島第2原発の廃炉を求める「オール福島」の声を踏みにじる姿勢を露骨にしています。経団連の榊原会長は「原発は必要」「被災地の原発に対する感情、痛みは承知しているが、感情と経済は分けて考える」などと述べ、財界の利益のために被害者の苦しみも、原発ゼロへの国民の願いも犠牲にする態度です。安倍政権は、こうした東電や財界の身勝手な「要求」に全面的に応え、原発推進へと暴走しているのです。
原発推進政治のために、原発事故特有の被害にいまも苦しんでいる被害者を切り捨てる政治の抜本的な転換が必要です。被害者を分断するいっさいの線引きや排除、切り捨てを行わず、すべての被害者の生活と生業が再建されるまで国と東電が責任を果たすことを強く求めます。
原発ゼロの未来を開く大きな動きが起きています。小泉・細川両元総理が顧問をつとめる原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟が、運転している原発を直ちに停止する、再稼働は認めないという、「原発ゼロ・自然エネルギー基本法案」という画期的な提案を行いました。日本共産党は、この提案に全面的に賛成です。野党の中でも共同が追求され、立憲民主、共産、自由、社民などの共同で「原発ゼロ基本法案」を提出しました。「原発ゼロ」の日本を実現するために、国民のみなさんと力をあわせる決意をあらためて表明するものです。
(「しんぶん赤旗」2018年3月11日より転載)