死者1人、重軽傷者11人を出した草津白根山の本白根山(群馬県)の噴火から2月23日で1カ月になります。同山でその後噴火は起きていませんが、気象庁は噴火警戒レベル3の入山規制を続けています。この噴火が衝撃だったのは、監視していた火口と異なる「想定外」の場所で発生したことです。研究者からは「火山観測の哲学が覆された」という声が上がり、全国の火山の監視・観測体制の強化がいよいよ急務となっています。犠牲を生んだ噴火の教訓を踏まえ、抜本的対策を強めることが「火山国」日本の政治の責任です。
専門家が決定的に不足
草津白根山は全国に111ある活火山の一つで、気象庁が24時間体制で常時観測している50カ所の火山の一つでもあります。しかし今回の噴火は、「不意打ち」でした。草津白根山は本白根山、白根山など複数で構成されており、近年活発な活動をしているとして機器を設置して監視していたのは白根山側でした。今回噴火した本白根山は「有史以来」活動がないとされており、監視カメラや地震計などはありませんでした。火山活動の観測・監視の難しさが改めて突き付けられた深刻な事態です。
気象庁はこの噴火を受け、全国の火山の監視・観測体制を見直すとしています。しかし問題は、それを担う火山の専門家が日本では決定的に不足している現実です。火山研究に主にたずさわっているのは大学の観測所などですが、研究者は2016年時点で45人にすぎません。常時監視している火山数にも届きません。1人の研究者が複数の火山の観測を掛け持ちしているケースも少なくありません。火山はそれぞれ特徴が異なっており、どんな兆候が噴火につながるのかを予測するのは困難とされています。ただ、火山ごとに山を熟知した専門家が置かれ、長期観測できる条件が整えば、わずかな変化で異変を察知できる可能性は高まります。だからこそ多くの研究者は、長期的視野に立った観測体制と人材育成の必要性を繰り返し強調しているのです。
しかし人材育成は進んでいません。文部科学省は専門家を育成するとしていますが、40歳以下の研究者は全国でわずか7人です(日本共産党の塩川鉄也衆院議員の予算委員会質問への答弁、9日)。大学の火山観測所の体制も、国立大学法人化されて以降、非常勤化が推進されました。政府は目標をたてて育成すると繰り返しますが、就職先が安定的に確保されないことには、火山研究を希望する人が増えるはずがありません。火山の観測は長期間の変化をじっくりとらえることが必要とされており、「短期の成果」が求められる現在の成果主義優先の研究にはなじみません。日本の大学や研究機関の教育・研究のあり方を根本的に見直すことが不可欠です。
気象庁の人員強化は急務
歴代政権の公務員削減によって気象庁の人員が減らされ火山付近に観測所が設置できないことは重大です。火山監視に責任を負うのは気象庁です。その体制が弱体化している現状は大問題です。人員増と専門職員の養成が必要です。
世界の活火山の約7%が集中する日本では火山災害に備え、国民の命と安全を守ることが政治の大きな役割です。必要な予算を確保し体制強化をすべきです。
(「しんぶん赤旗」2018年2月22日より転載)