広島高裁が、四国電力の伊方原発3号機(愛媛県伊方町)の運転差し止めを命じる決定を出しました。決定では、同原発から約130キロの距離にある阿蘇山(熊本県)の噴火による影響を指摘し、伊方原発の「立地は不適」と断じました。火山国・日本で原発を動かすことが、いかに危険であるかを司法がきびしく警告したものです。事故を起こせば、取り返しのつかない被害を及ぼす原発のリスクはいよいよ明白です。原発再稼働の推進をやめるべきです。
規制委の「適合」判断批判
伊方原発3号機は政府の原子力規制委員会が「合格」を与え、昨年8月に再稼働させました(現在は定期点検で停止中)。運転差し止めの仮処分は、広島市と松山市の住民が求めたものです。今年3月、広島地裁は住民の申し立てを「却下」しました。それをくつがえした広島高裁の決定は重いものがあります。決定が取り消されない限り同原発は来年9月30日まで停止されます。原発運転停止の仮処分の決定は福井、大津両地裁で出されましたが、高裁では初めてです。
今回の決定の特徴は、火山の影響による危険を極めて深刻にとらえていることです。
決定では、原子力規制委が審査でもちいる「火山影響評価ガイド」を厳格に適用し、原発から160キロ内の火山の噴火規模を推定できない場合は、過去最大の噴火を想定するとしました。四国電力が行った地質調査などを見ても、約9万年前に起きた阿蘇カルデラでの巨大噴火で「火砕流が伊方原発敷地に到達した可能性が十分小さいと評価することはできない」と原発の「立地は不適」と結論づけました。
また火山灰など噴出量は阿蘇の最大規模の噴火でなくても四国電力の想定の約2倍近くで、降下の想定は「過少」と指摘しました。
そのうえで決定は規制委が伊方原発を新規制基準に「適合」という判断をしたのは「不合理」だとのべ、住民の「生命身体に対する具体的危険の存在」が推定されるとのべました。火山の危険を直視しない姿勢を批判したものです。
高裁決定の考え方に立てば、阿蘇カルデラと陸続きの九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)、や玄海原発(佐賀県玄海町)のほか、北海道電力の泊原発3号機(北海道泊村)などの立地の是非も改めて問われます。
決定は、伊方原発から約100キロの広島市の住民の被害の恐れを認めました。原発事故がきわめて広い範囲に危険をおよぼすことは明らかです。
高裁決定は火山の影響を除けば規制委員会の新基準は「合理的」としました。しかし、同原発の北側およそ8キロメートルに国内最大の活断層である「中央構造線断層帯」が走っているなどの不安はまったく払しょくされていません。
再稼働に道理はない
規制委の新基準が原発の安全性を保証しないことは明確です。それにもかかわらず、安倍晋三政権はエネルギー基本計画で、2030年度に全電力供給の20~22%を原発で賄う目標を掲げます。これは30基程度の再稼働が前提です。国民の命と安全をおきざりにした暴走というしかありません。安倍政権は再稼働の推進、原発への固執を改めるべきです。
(「しんぶん赤旗」2017年12月15日より転載)