日本共産党嶺南地区委員会 > しんぶん赤旗 > 原発ゼロしかない・・多数世論無視し再稼働進める安倍政権 & 経済・電力供給 どこから見ても“無用”・・再生可能エネヘ移行こそ 龍谷大学教授・大島堅一さんに聞く

原発ゼロしかない・・多数世論無視し再稼働進める安倍政権 & 経済・電力供給 どこから見ても“無用”・・再生可能エネヘ移行こそ 龍谷大学教授・大島堅一さんに聞く

 東京電力福島第1原発唄故から6年10カ月になりますが、事故の収束もままなりません。しかし、安倍政権は、再稼働反対の圧倒的多数の世論を無視して、原発の再稼働をおし進めています。

「原発取材班」

 安倍政権は、原子力規制委員会の新規制基準に適合すれば、再稼働を進めるという原発推進に固執しています。

 規制委はこれまでの4原発8基に加え、昨年(2017年)は九州電力玄海原発3、4号機(佐賀県)、関西電力大飯原発3、4号機(福井県)、東京電力柏崎刈羽原発6、7号機(新潟県)の3原発6基を審査″合格″にしました。(地図参照)

 これによって、関電や九電が審査を申請したすべての原発が認められました。

関電や九電は玄海原発、大飯原発の(2018年)3月、5月の再稼働をねらっています。

 安倍政権は現在、中長期のエネルギー政策の方向性を示す「エネルギー基本計画」の見直し作業を進めています。ここで、政権は2030年の電力量の20〜22%を原発で賄うとする目標の枠組みを変えないとするだけでなく、50年に向けた原発の位置づけ、新増設への言及があるかどうかが焦点となっています。30年目標の達成には原発30基以上の再稼働を必要としています。

 財界は、同計画に原発の新増設を盛り込ませようと画策しています。関西経済連合会は昨年末、意見書を公表し「早期に国において新増設・リプレース(建て替え)の方針を決定すべきである」と要求しています。

「立地不適」・・司法が初判断

 世論は再稼働反対が多数です。政府の有識者会議にも、再稼働反対が賛成の2倍あるとする世論調査資料が出されたほどです。

 福島原発事故を起こし、賠償や廃炉を優先すべき当事者の東電に、柏崎刈羽原発を運転する「適格性」を認めた昨年末の規制委の決定に、地元新潟をはじめ国民から批判の声が強く上がったことにも現れています。新潟県の米山隆一知事は「事故の検証がなされない限り、再稼働の議論は始められない」との姿勢を強調しています。

 さらに住民らが原発の運転差し止めを求める訴訟も各地で起こされ、昨年末には広島高裁が、四国電力伊方原発3号機(愛媛県)の運転差し止めを命じました。決定は、火山の影響評価を根拠に、司法として初めて原発の「立地不適」を判断しました。世界有数の地震・火山国で原発を動かすことに警鐘を鳴らした決定です。

 東電福島第1原発事故の避難者らが、東電と国に賠償を求めた訴訟でも、「事故は起きない」と安全神話をふりまき、事故が起きたら「想定外」と責任逃れをしてきた国の責任を断罪する判決が昨年、前橋地裁や福島地裁で出されました。

 事故を繰り返さないため、原発ゼロに進むしかありません。


 

 原発が無用なことがますます明確になっています。

 推進派は、原発は経済的にも有利と主張しますが、現実には再稼働をするにはお金がかかるため関西電力は、100万キロワット級の大飯原発1、2号機を廃止する判断をしました。

 電力の安定供給に関しても原発ゼロでも可能だと電力会社自身が向こう10年の電力供給計画で明確にしています。原発なしで安定供給ができないなどというのはまったく根拠がありません。

 経済性についても、福島第1原発事故の事故費用が増大しており、原発は不経済だということがさらに明らかになっています。

 また、原発が再生可能エネルギー普及の妨げになっていることもいっそうわかりました。電力自由化で、日本でも再生可能エネルギーが増えましたが、原発の電力が優先的に給電されるので、その普及を妨げているのです。

 国際的に見ても、原子力は明らかに衰退局面であり、ピークは過ぎています。日本でもすでに衰退局面に入っています。

 しかし、政府の政策はそうした潮流に逆行し、原発のコストやリスク(危険)を国民に押しつける方策を続けています。

 たくさんの原発延命策が取られようとしています。2020年に電力自由化が最終段階になりますが、電力会社にとって重たい原子力のコストを送電線使用料に乗せて徴収しようという動きが加速化しています。それを許してはならないと思います。

 世界は再生可能エネルギーを使っていないとサプライチェーン(供給工程)に入れないなど、そういう時代になっているのです。しかし日本では「非化石価値取引市場」などと称し、再生可能エネルギーに原子力を混ぜて売ろうなどということも

考えられています。これでは、かえって日本経済の足を引っ張ることになります。

 現在、見直し作業がされているエネルギー基本計画ですが、原発や石炭を「ベースロード電源」との位置づけをやめさせるべきです。

 今年12月には、パリ協定の具体的なあり方が国際的に決まります。基本計画で世界の流れに逆行するものを作れば、日本政府はそれをもとに交渉します。世界にとっても悪い影響を及ぼしかねず、日本の経済にも重大な問題です。

(「しんぶん赤旗」2018年1月1日より転載)