四国電力伊方原発3号機の運転差し止めを認めた広島高裁の決定を受けて、裁判所前に「伊方3号機差止命令下る」「被爆地広島原発を止める」の垂れ幕が掲げられると、支援者から大きな拍手と歓声が上がりました。
報告集会で河合弘之弁護士は「高裁での勝利はこれからの裁判の流れを大きく変える歴史的な成果だ」とのべ「火山事象に対する問題点は、全国の原発においても同様に当てはまる。他の原発でも同様に追及していく」と力を込めました。
抗告人の一人、広島市の絹崎健太さん(37)は「人生を狂わせた原発事故の被害者から話を聞いて、原発反対に立ち上がりました。原発も原爆もいりません」と語りました。
東広島市の奈良直子さん(54)は「一人でも多く参加して原発反対の意思を伝えたいと参加しました。原発の恐ろしさを伝えていきたい」と語りました。
“史上初”
弁護団が声明
四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)の運転差し止めを命じた広島高裁決定を受けて、住民側弁護団は12月13日、「高裁で原発の運転禁止を命じるのは史上初」などとする声明を発表しました。
声明は、「被爆地ヒロシマの裁判所で、これ以上放射線によって苦しむ人々を増やさない決定が出された」と評価。しかし、差し止め期限を2018年9月30日と区切っているのは「不合理」と批判し、期限が迫った段階で差し止め仮処分の申請をする予定だとしています。
また、差し止めの理由になっている火山の問題点は、全国の原発でも同様に当てはまると指摘し、他の原発でも追及していく決意を表明しています。
橋頭堡築いた
伊方原発をとめる会共同代表・須藤昭男さんの話 広島高裁が運転停止を決めてくれたことを評価しています。原発を中心とする巨大な勢力を攻めあぐねているときに一つの橋頭堡(きょうとうほ)を築くことができた。私たちの活動は無駄ではなかったと感激しています。これを契機に伊方原発を完全に止めるまで頑張りたい。(松山市での記者会見で)
火山影響 他原発も
解説 広島高裁が四国電力伊方原発3号機を差し止める決定をだしました。決定は、四国電のシミュレーションから伊方原発から130キロに位置する阿蘇カルデラの約9万年前の噴火で「火砕流が伊方原発敷地に到達した可能性が十分小さいと評価することはできない」として、「伊方原発の立地は不適」と結論づけています。原子力規制委員会が審査で用いる「火山ガイド」は、火砕流が原発に到達する可能性が十分小さいと評価できない場合には立地不適としているからです。
また、「社会通念」をもって「極めて低頻度」な危険性を容認した昨年4月の福岡高裁宮崎支部の決定などを引き、火山ガイドが考慮すべきだと定めた自然災害を限定解釈して判断基準の枠組みを変更することは許されないと指摘していることも重要です。
今回の高裁の考え方が定着すれば、影響は伊方原発にとどまりません。火砕流の影響については、九州電力川内原発、玄海原発、北海道電力泊原発などで過去に到達したとされており、今後これらの原発の立地評価も問題となる可能性があります。
さらに決定は、最大規模の噴火でなくても、影響の想定が過小と批判しており、規制委の今後の対応が注目されます。(「原発」取材班)
(「しんぶん赤旗」2017年12月14日より転載)