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COP23inボン参加者にきく㊤温暖化交渉 着実に前へ

 11月6日から17日までドイツ・ボンで開かれる地球温暖化対策の国連会議、COP23(国連気候変動枠組み条約第23回締約国会議)。米国のトランプ政権が、温暖化対策の国際的枠組みである「パリ協定」からの離脱を表明するなか、同協定の具体的なルール作りが話し合われます。日本のNGOからも各団体が参加します。参加するメンバーに、COP23の特徴や課題について話を聞きました。(岡本あゆ)

 

CASA(地球環境市民会議)専務理事、弁護士 早川光俊さんに聞く

早川 光俊さん

パリ協定特徴は

 パリ協定が京都議定書と違うのは、途上国も含めたすべての国が温室効果ガスの削減義務を負うことが盛り込まれた点です。

 もうひとつは「2度目標」。産業革命前からの地球の平均気温の上昇を2度未満に抑えるという、明確な目標が書き込まれています。そのために「21世紀後半に人間の活動による温室効果ガスの排出量と吸収量をバランスさせる」と合意しました。これには私たちも驚きました。

 人為的な吸収には森林を増やすなどの手段がありますが、量として微々たるものです。バランスをとるためには、排出量を大幅に減らすしかありません。

 つまり、産業革命に匹敵する、エネルギー革命を起こさなければならないことに国際社会が合意したわけです。

COP23注目点

 今、各国が出している削減目標では、到底2度目標には届きません。そこでパリ協定では、5年ごとに目標を見直すことになっています。

 2018年に1回目の見直しが行われます。各国の削減目標が妥当なものであるかをどう検証するのか、決める必要があります。今回のCOP23の大きなテーマです。

 この問題では、はっきり言って日本は落ちこぼれです。まず2030年までに1990年比で18%削減という目標は低すぎます。EUは40%削減が目標ですから、かなり見劣りしています。しかも一度は25%削減を掲げながら自民党政権で撤回しました。パリ協定には、掲げた目標を後退させてはならないとのルールが書き込まれましたが、これは″日本条項”ですよ。

 一方で、日本は2050年までに85%削減という目標も立てています。欧州はすでにどんどん削減していますから、このくらいの目標は達成可能でしょうが、日本はできていません。

 短期の目標は低いのに、長期では達成できそうにないことを約束しているのです。本気で削減するつもりがないようにみえます。

「パリ宣言」の採択を喜ぶ(左から)フィゲレス国連気候変動枠組み条約事務局長、瀋基文(パン・ギムン)国連事務総長、COP21議長のファビウス仏外相、オランド仏大統領=2015年12月、パリ(国連提供)

世界前進してる

 パリ協定の締約国は今169力国と、批准はかなり進んでいます。米国の離脱に追随する国もありません。

 日本は産業界の意見を非常に尊重しますが、欧州の産業界にはパリ協定をひとつのビジネスチャンスにしようという機運があります。英国や中国ではガソリン自動車の販売をやめる動きが出ていますし、仏では大手銀行が化石燃料を扱う企業には融資しないと決めたりしています。再生可能エネルギーの爆発的な普及も含め、世界は変わりつつあります。

 米国でも州や企業レベルでは同様です。その中でトランプ政権だけが置いてきぼりになっています。日本も同じです。

 交渉に関わっていると、国際社会というのは思ったより賢く、健全だと感じます。会議が決裂し、もうどうなるかと思うこともありますが、温暖化交渉は着実に前へ進んでいます。

パリ協定

 2015年に開かれたCOP21(国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議)で合意した、2020年以降の地球温暖化対策の国際条約(昨年、発効)。史上初めですべての国が参加する枠組みとして、産業革命前からの気温上昇を1・5~2度未満に抑え、今世紀後半にC02などの温室効果ガス排出を実質ゼロにすると決めました。

COP 

 1992年に採択された国連気候変動枠組条約の締約国会議。温室効果ガス削減などの、気候変動に関わる国際的枠組みを話し合います。パリ協定の締約国会合(CMA)も同時に開催。

(「しんぶん赤旗」2017年11月1日より転載)