神戸製鋼所の品質データ改ざん問題は、深刻な事態がさらに拡大し、いまだに不正の期間も明らかになっていません。原子力関連施設でも神戸製鋼製品の調査が進められていますが、全体像は分からないままです。「原発は大丈夫?」という不安が広がっています。
(松沼環)
原子力関連施設でこれまでに明らかになった神戸製鋼による不正は、東京電力福島第2原発に納入した熱交換器の配管と、日本原燃の遠心機の部品の検査データです。東電、原燃によると、いずれも未使用だったといいます。
神戸製鋼のホームページ上のパンフレットには「素材から機器・システム、プラント・施設建設にいたるまで独自の製品・技術で原子力産業に貢献しています」とうたっています。同社は、核燃料被覆管や制御棒駆動用ステンレス鋼管、原子炉容器の部材、蒸気発生器の部品などを製造。このほか、建材や高いシェアを誇る溶接材料など、原発でも多様な製品が使用されていると考えられます。
規制委は、炉心周りなど安全上重要な施設に同社製品が使われていないか、各電力会社などに報告を求めています。ただ同社との直接取引以外に、他社製品の材料に同社製品が使用されていることもあるため、全体の把握には時間がかかるものと見られています。
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原子力業界に詳しい電力会社元幹部は「見つかったのは氷山の一角。どこに神戸製鋼の素材をつかっているか、追いかけだしたらきりがない。この不正はそれぐらい深刻な問題だ」と指摘します。
規制委は、電力会社からの報告に基づいて現在稼働中の九州電力川内原発や関西電力高浜原発などについて、「安全上の問題にただちに結びつくものは見つかっていない」としています。一方で「不正の全貌が分かっていない」(更田豊志委員長)とも認めています。
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このためグリーンピース・ジャパンなど市民団体は10月24日、規制委に対し、原発を停止して「包括的で確認可能な、透明性ある検査」などを求める要請書を提出しました。
先の電力会社元幹部は「素材が駄目だと根底が覆ってしまう。しかし、素材の性質を追いかけるのは本当に大変だ」と懸念を示します。
規制庁は、神戸製鋼側と直接面談し同社の調査の内容などについて聞き取りをしましたが、神戸製鋼は、過去1年分より以前の不正に関する調査は、外部の調査委員会にゆだねるとしており、調査の完了のめどはたっていません。
元原発プラント設計技術者の後藤政志氏は「普通の感覚では品質に信用がなければ止めて確認をすべきだろう。電力やメーカーには安全性に関して説明責任がある。また、規制当局の姿勢も問われる」と指摘します。
(「しんぶん赤旗」2017年10月29日より転載)