国は9月26日、東京電力福島第1原発の廃炉作業の工程表「中長期ロードマップ」を改定し、1、2号機使用済み燃料プールの核燃料取り出しの開始時期を従来の計画より3年遅らせ2023年度をめどとする方針を決めました。
溶け落ちた核燃料(デブリ)の取り出しについては、1~3号機いずれかの詳細な取り出し工法の確定時期を、18年度上半期から19年度に遅らせました。取り出し開始はこれまで通り21年内を維持。
このほか、放射能汚染水発生量を20年内に1日当たり約150トン程度まで抑制する目標などを盛り込みました。
プールの核燃料取り出しに関しては、1号機原子炉建屋の調査で、原子炉格納容器上部にかぶせた遮蔽(しゃへい)体にずれが見つかり高放射線量の低減策などに時間を要することが明らかになっていました。前回15年の工程表改定で開始時期の先送りを決定。3号機では今年1月、さらに延期していました。
デブリ取り出しは、格納容器を水で満たさずに横から回収する工法を軸にすると決定。格納容器底部の取り出しから始め、段階的に拡大するとしています。格納容器を水で満たす工法は、放射線の遮蔽と放射性物質の飛散防止が期待できるものの、止水は技術的に困難としています。横からの取り出しのため、作業現場の放射線量低減や、放射性物質の閉じ込め技術確立などが必要だとしています。
工程表は11年12月に決定。その後の改定を重ね、今回は15年6月以来4回目。
不確実性大きく困難な道
解説 国が改定した東京電力福島第1原発の廃炉作業の工程表「中長期ロードマップ」で、使用済み燃料プールからの核燃料取り出し開始時期などの遅れが決まったことは、廃炉が困難な道のりであることを改めて示しました。
今後も調査が進むにつれ、高い放射線などで困難さが明らかになれば、溶け落ちた核燃料(デブリ)の21年内取り出しや、30~40年後とする廃炉作業の終了時期に影響が及ぶとみられます。工程表は“絵に描いた餅”になります。
工程表は、デブリの情報や技術開発が「未(いま)だ限定的」だとし、取り出しの検討は「未だ不確実性が大きい」としています。今後の調査で得られる新たな知見を踏まえ「不断の見直しを行う」などの文言が並びます。
東電福島第1廃炉推進カンパニーの増田尚宏プレジデントは26日の記者会見で、デブリ取り出しの開始時期をめぐり「担保するものと言われると難しい。答えられない」と述べました。
廃炉作業の最大の難関であるデブリの取り出し。国際廃炉研究開発機構(IRID)は、1~3号機のデブリは合計約900トンと推定し、このうち、取り出しを先行する格納容器底部に約9割が分布しているとみています。3号機でようやくデブリとみられる物体が確認されたものの、性状や分布状況が十分把握できていません。
原発事故から6年半が過ぎましたが、廃炉の見通しは立たない一方で、東電は、原子力規制委員会から柏崎刈羽原発6、7号機(新潟県)の運転資格を容認されました。東電は、原発再稼働よりも廃炉作業に全力を注ぐべきです。(唐沢俊治)
(「しんぶん赤旗」2017年9月27日より転載)