原子力規制委員会は、福島第1原発事故を引き起こした東京電力について、柏崎刈羽原発を運転する適格性を容認しました。規制委は、これで再稼働の前提となる新規制基準に「適合」したとする審査書案の取りまとめに向けて進むことになります。しかし、事故の実態からも、規制委での議論からも、東電に運転する資格がないのは明白です。(「原発」取材班)
今回、了承された「適格性についての確認結果」は、「(柏崎刈羽原発の)運転を的確に遂行するに足りる技術的能力がないとする理由はないと判断した」と結論づけました。
しかし、事故を引き起こした東電の責任は果たされていません。
事故から6年半。福島県によると、いまだに5万5000人以上が避難生活を強いられています。賠償や除染も不十分なままです。事故は収束しておらず、原子炉格納容器の内部調査も始まったばかり。原因究明は途上です。廃炉の見通しすら立っていません。事故処理費用も当初の2倍の21・5兆円に膨れ上がり、政府は国民に負担を押し付けようとしています。これらの事態を引き起こした東電に、再稼働の資格があるとは到底言えません。
東電については、福島事故の対応でメルトダウン(炉心溶融)をめぐる隠ぺい体質も問題になりました。規制委の審査でも、柏崎刈羽原発の事故時の対応拠点である免震重要棟の耐震不足を知りながら報告しなかったことが発覚しています。適格性をいうなら、こういう体質こそ問われています。
しかし、9月13日に規制委が了承した文書には「事故は、東電の技術的能力が欠けていたがゆえに起きたととらえるべきではなく」などと東電を弁護までして、お墨付きを与えています。
ここに至る規制委の対応も道理がありません。7月には、福島第1原発の廃炉への取り組みで汚染水の取り扱いや廃棄物問題で「主体性がさっぱり見えない」などと東電を非難していました。しかし、東電からその回答が具体的に得られたとは言えないのに、「適格性を否定する状況にない」などと態度を一変したからです。「再稼働ありき」で審査を進める規制委の姿勢は批判を免れません。
(「しんぶん赤旗」2017年9月14日より転載)