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東電・柏崎刈羽原発“審査適合”方針・・再稼働許されない

東京電力柏崎刈羽原発5〜7号機全景。手前から7号機、6号機、5号機(東電提供)

 原子力規制委員会が9月6日、新潟県にある柏崎刈羽原発6、7号機の再稼働をねらう東京電力に対し、原子力事業者としての「適格性について否定する状況にない」と評価しました。規制委は13日にも原発の新規制基準に「適合」したとする審査書案をまとめようとしています。しかし、規制委の対応には二つの大問題があり、再稼働にお墨付きを与えることは到底許されません。

(松沼環)

規制委腰砕け・・「おとなの頭で」と合理化

 一つは、規制委のこれまでの態度に照らしても道理がないことです。

 東電は今後の事業計画を定めた「新々・総合特別事業計画」を5月に策定。それに伴い6月に経営陣が交代しました。

 「新々総特」には、他電力などとの原子力部門の再編・統合の方針が示されていました。これに規制委は強く反発。新規制基準の審査終盤を迎えていた柏崎刈羽原発6、7号機は、運転主体の変更が認められないからです。

 また、東電で事故当時を知る経営陣が、軒並みすげ替えられることに、田中俊一委員長などから不信の声が上がりました。

 規制委は7月10日、新経営陣の川村隆会長、小早川智明社長らを呼び意見交換。そこで福島第1原発の廃炉への取り組みなどで、汚染水の取り扱いなどの具体的な問題を示して「主体性が見えない」と東電を批判し、「やりきる覚悟と実績を示す」ことなどで回答を求めました。

 さらに、会見で田中委員長は「姿勢を見せるだけで信用しろというほど甘い話ではない」などと発言していたのです。

 意見交換後、川村会長が報道各社のインタビューで、第1原発のタンクにたまった放射性物質のトリチウム水の海への放出を判断しているとの発言が報じられ、漁民などからの強い反発を受け、東電が発言を取り消す事態となりました。この問題でも田中委員長は「(地元と)向き合う姿勢と違う」、「はらわたが煮えくり返る」などと批判していました。

 先月(8月)25日、東電が規制委に提出した回答文書には「やり遂げる覚悟」「安全性をおろそかにして、経済性を優先する考えはみじんもありません」などと抽象的文言が並ぶだけ。

 しかし、これをもとに同月(8月)30日に行われた経営陣との意見交換では、一転してほとんど批判らしい声は上がらなかったのです。

 同日の会見で、″具体的な回答はこれ以上求めないのか″″実績がまだ示されていないのではないか″といった記者の質問に、田中委員長は「もう少しよく考えてください、おとなの頭で」などとまともに答えませんでした。

適格性欠く事例が次々に

 二つめは、東電の経営状態を再稼働の理由にすることが規制委の任務の逸脱であり、許されないということです。

 そもそも柏崎刈羽原発の審査では、東電に原子力事業者としての適格性がないことを示す事態がたびたび判明しています。

 今年に入ってから、事故時の対応拠点の1つとしていた免震重要棟が、原発で想定されている地震の揺れ(基準地震動)に耐えられないことが判明。東電社内で2014年に結果を試算していながら、「社内の連絡が不足した」ために、審査会合では異なる説明が続けられてきました。規制委は審査内容に「疑義を抱かざるを得ない」として、東電に申請書類の総点検と再提出まで命じました。

 また、15年には柏崎刈羽原発で大量のケーブルが長年にわたり不適切に敷設されていたことが判明。敷設が下請け任せで東電による確認もほとんどされず、長年放置されていました。

安倍政権と一体で方針化

 6日の議論では、次期委員長になることが決まっている更田豊志委員長代理は「事故の当事者であることが、柏崎原発を運転する上で負の効果を持つとは考えておらず、むしろメリットがある」などと適格性を認める発言をしました。

 さらに「伯崎刈羽を動かすことが、事故の責任のとり方だという東電の考えに、一定の理解を持つ」とまで述べました。

 これは、安倍政権と東電が1体でつくった方針でもあります。

 5月に策定され国も認定した「新々総特」にも、「福島の責任を貫徹する」などとして柏崎刈羽原発の再稼働を実現することが前提となっています。伯崎刈羽原発を1基稼働させれば、約400億〜900億円のコストを減らすことができるという数字まで挙げています。

 7月の規制委との意見交換で、川村隆会長は「日本が原子力なしでは、この後やっていけないということを示していく」「原子力がきちんと動かせることを見せる責任が東電にある」などの発言もしています。

 更田委員長代理の発言は、これらを追認したもので、規制委の任務を逸脱するものです。

■東電と規制委

6月    東電の経営陣が交代

7月10日 東電の会長、社長らと規制委が意見交換

      規制委は、「福島第1原発の廃炉を主体的に取り組み、やりきる覚悟と実績を示すことができない事業者に、柏崎刈羽原発の運転をする資格がない」と批判。

8月25日 東電が意見交換に関する回答を規制委に提出。規制委から出された汚染水処理や廃棄物などの具体的な課題の言及なし。

8月30日 東電の会長、社長らと規制委が「回答」をもとに2回目の意見交換。

9月6日  田中俊一委員長は「適格性を否定する状況ではない」と、一転して東電を評価。

 

福島思い怒り禁じ得ない

原発問題住民運動全国連絡センター筆頭代表委員・原発事故被害いわき市民訴訟原告団長・・伊東達也さん

 

 原子力規制委員会が、福島原発事故を起こした東電に対し、柏崎刈羽原発を動かす「適格性」を容認しようとしていることに、福島の惨状を思い、強い怒りを禁じ得ません。

 国の意向を受けて、すげ替えられた東電の新会長に原発メーカーの会長が就き、規制委と意見交換した時に「原子力なしでは、やっていけないことを東電が示していくことが大事」などと発言していました。今回、次期委員長の更田豊志委員長代理が「柏崎刈羽を動かすことで事故の責任を果たそうというのは、一定の理解ができる」と述べたことは、新会長の発言に迎合したものです。福島事故を終わったことにして、福島切り捨てに同調する、極めて深刻な事態ではないでしょうか。

 福島第1原発事故は起こるべくして起きたと実感しています。東電にはウソにウソを重ねてきた歴史もあります。福島での賠償も誠実にやろうとしていません。事故も収束していません。東電には危険極まりない原発を動かす体制も能力もありません。世論の多数は再稼働に反対です。政府と東電、規制委も1体になって原発を推進しようとしていますが、私たちはひるむことなく、たたかい続けます。

(「しんぶん赤旗」2017年9月9日より転載)