中央防災会議の作業部会は8月25日、南海トラフ巨大地震について「確度の高い予測はできない」として、地震予知を前提とした現在の対策を見直すよう求める報告書案をまとめました。一方で大地震につながる前兆現象を観測した場合は、住民に事前避難を促す新たな対策を示しました。
報告書案は、科学的な知見を基に、地震の発生場所や時期などを高い確度で予知するのは困難と指摘。駿河湾周辺を震源とする東海地震の予知を前提とした大規模地震対策特別措置法(大震法)の防災対策を「改める必要がある」と明記しました。
報告書案はまた、大震法は、東海地震の被害想定域だけを対象にしていることに関し、南海トラフ巨大地震の被害想定エリア全域を対象とし、対策を検討すべきだと言及。特に対応が遅れている南海トラフの西側地域での観測の強化や防災対策の必要性を掲げました。
また、南海トラフ巨大地震につながり得る前兆とされる異常現象に関し、南海トラフ地域の半分でマグニチュード(M)8クラスの地震が発生するなどの4ケースを「典型的な異常現象」として分類。こうした前兆現象の発生直後や海岸からの距離といった地域特性に応じ、住民避難などの対策を促すよう求めています。
その上で、具体的な防災対応として、国が地方自治体の協力を得て、地震被害が想定されるモデル地区を複数設定し、地域ごとに防災計画を作ることなどを提案。南海トラフ沿いの広い範囲で防災計画作りが進むよう国に指針策定を求めました。
南海トラフ巨大地震
静岡県沖の駿河湾から宮崎県沖の日向灘にかけて延びる海底の溝「南海トラフ」に沿って起きると予測されている地震。マグニチュード(M)9クラスの地震が発生した場合、最大約32万人が死亡し、約220兆円の経済被害が発生すると見込まれています。
(「しんぶん赤旗」2017年8月26日より転載)