日本共産党嶺南地区委員会 > しんぶん赤旗 > エネ計画見直し・・原発推進ありきは世論に背く

エネ計画見直し・・原発推進ありきは世論に背く

 国の「エネルギー基本計画」を見直す議論が経済産業省の審議会で今月始まりました。同計画は電気など国民生活や産業の基盤となるエネルギー需給の基本とするもので、ほぼ3年に1度見直されています。安倍晋三政権が2014年に決めた現在の計画は原発を「重要なベースロード電源」と位置づけ、将来も推進するとしています。今回の見直しでも、政府は「骨格は変えない」(世耕弘成経産相)と表明しています。しかし世論は、「原発再稼働ノー」が6割を占めます。国民の声にこたえ、エネルギー政策を根本から改める議論が必要です。

行き詰まる再稼働路線

 現在の計画は、東京電力福島第1原発事故後に策定されました。しかし事故による甚大な被害などまるでなかったかのように原発を「低炭素の準国産エネルギー」「優れた安定供給性と効率性」「運転コストが低廉」と持ち上げ、再稼働推進を明記した許しがたいものです。安倍政権はこの計画に基づき30年時点の電源構成を決め、総発電電力量に占める原発の割合を20~22%としました。これは原発を30基以上稼働させることを意味するものです。運転延長で老朽化した原発も動かす危険極まりない道です。

 見直し議論をする審議会の18人の委員には原発メーカー役員、原発研究者、原発推進の知事らが顔をそろえています。最初の会合(9日)では、「再稼働のスピードが遅い」「原発の新増設の議論に踏み込むべきだ」などの発言が続き、世論とかけ離れた姿を浮き彫りにしました。

 そもそも14年の現計画に基づく再稼働路線は行き詰まっています。原発事故は「収束」どころか、ようやく原発内部の一部を確認できたのみです。福島では依然5万6千人が避難生活を強いられています。事故処理費用(廃炉や賠償など)は当初の見込みから倍増し、21・5兆円に膨らみました。原発が究極の高コストであることは明らかです。

 政府が高速増殖炉「もんじゅ」の廃止を決めざるを得ないなど核燃料サイクルも破たんしました。再稼働すれば計算上あと6年で全国の原発の使用済み核燃料の貯蔵プールは満杯になります。それらをどこにどのように処理するのかも決まっていません。

 15年8月まで2年近く続いた「原発ゼロ」期間は、日本社会が原発なしでもやっていける事実を示しました。電力需給の面で問題はありませんでした。原発の代わりに化石燃料がたき増しされて二酸化炭素(CO2)が増えるといわれたものの、省エネが進み、再生可能エネルギーが増えた結果、むしろCO2排出は減りました。現在は5基が再稼働したものの、電源構成の原発比率は2%にすぎません。再エネは15%に増えています。原発推進に固執する計画には道理がありません。

「原発ゼロ」への転換を

 韓国では新大統領が安全面、コスト面、環境面から原発からの脱却を表明しました。福島原発事故以来、ドイツやベトナム、台湾、スイスなどが相次いで撤退を決めています。エネルギーの在り方は国の未来の姿を決めるものです。原発推進ありきの計画でなく、国民的議論をふまえ「原発ゼロ」に向けた政策に転換すべきです。

(「しんぶん赤旗」2017年8月22日より転載)