取りはぐれない「私募債」に無担保から置き換えさせる
福島第1原発事故を引き起こした東京電力への貸し手責任が問われるメガバンク(巨大銀行)などの金融機関は、弁済期限が到来した、もともと無担保だった東電の借入金を、「私募債」といわれる″取りはぐれ″ない「担保付き」に置き換えさせています。「私募債」は、原発事故被害者への損害賠償等よりも優先して弁済されることとなっており、「原発被害者への賠償よりも、自らへの弁済を優先か」と批判の声が広がっています。
(中東久直)
日本共産党の塩川鉄也衆院議員は昨年(2013年)11月20日の衆院経済産業委員会で、この問題を追及しました。その後、昨年12月に大銀行などの金融機関による東電への新規融資・借り換え約5000億円がおこなわれました。東電広報部によれば、そのうち2000億円は「私募債」でした。大銀行などによる2014年以降の融資で、この問題をどうするかが改めて浮上しました。
利息も支払い
本紙は3メガバンクに対して、「私募債」の仕組みづくりや担保をめぐる対応などの問題で質問。三井住友銀行広報部、みずほフィナンシャルグループコーポレート・コミュニケーション部広報室、三菱東京UFJ銀行広報部のいずれもほぼ同様で、「個別の取引についてのコメントは差し控えさせていただきます」と回答しました。
国の会計検査院の東電にかかわる報告書(13年10月)によると、「担保付き」の日本政策投資銀行を除く、無担保の借入金は原発事故直後の11年3月末と13年3月末と比べると、約6700億円減っています。それが「担保付き」の「私募債」7264億円に置き換わっている形です。(グラフ)
東電と原子力損害賠償支援機構は昨年12月27日に新たな総合特別事業計画を政府に申請。政府は今月に認定する見通し。貸し手責任がある大銀行などへの東電の「協力要請」のあり方が問われます。
東電は原発事故直後の11年4月から13年6月までに、借り入れをしている大銀行などに累計824億円もの利息を支払っています。原発事故による被災者への賠償金を出し渋り、大銀行などには利息まで支払い続けているのです。
国民は負担増
国は、原発事故の除染費用や賠償金支払いのために資金援助枠を5兆円から9兆円に拡大するなど、東電の救済、延命策を打ち出しています。経営責任や大株主・大銀行などの責任が免罪されたまま、電気料金と税金を通じた国民負担だけが増える構図です。
東電の資金調達 国の責任は重大・・日本共産党の塩川鉄也衆院議員の話
昨年11月、衆院経済産業委員会で、この問題を取り上げ東電の姿勢をただしました。原発被害者への賠償責任より自らの取り分のことしか考えない身勝手なメガバンクの姿勢は許せません。同時に政府・経産相は、資金調達面でいわば″共同責任″を負っており、極めて重大です。
「私募債」未償還残高7264億円・・東電の総財産が担保
東電が発行する社債(公募社債)と、日本政策投資銀行からの借入金は、東電の総財産が担保に入っている「一般担保」付きです。原発事故後、「信用力が低下」し、新規で社債を発行できない状況が続く東電。金融機関との協議の結果、「私募債」という形態をとって、金融機関からの融資に実質的に「一般担保」が付くという仕組みをつくりました。一昨年(2012年)8月から始まり、昨年3月末の「私募債」の未償還残高は7264億円です。