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論壇時評・・経営と経済蝕む“衰退産業”原発/谷本諭

 東日本大震災・福島原発事故から6年目にあたる3月の論壇は、各誌で原発関連の特集が組まれています。そのなかで、原発の高コスト・不採算構造を明らかにし、原発推進が経済政策としても″時代遅れ″となっていることを指摘する論考が目立ったことに注目しました。

米国追随政策で泥沼の赤字地獄

山岡淳一郎(ノンフィクション作家)

 山岡淳一郎(ノンフィクション作家)「原発ビジネスの罠(わな)」(『世界』)は、東芝を「泥沼の赤字地獄]に引きずり込む要因となった、原発関連分野の経費膨張と業績不振の実態を追跡。

 「原子力事業は重電メーカーの経営を蝕(むしば)むがんと化した」と喝破します。さらに、東芝が2000年代に米国の原発メーカーを買収するなど原子力事業の比重を高めた背景に、当時の米ブッシュ政権が打ち出した「原子力ルネッサンス」と、それに追随した経済産業者の原発政策があったことを解明。「アメリカと運命をともにする関係」こそ「買収の要諦だった」と結論づけています。

中野洋一(九州国際大学教授)

 中野洋一(九州国際大学教授)「絶対に採算の取れない原発ビジネスを回し続ける、『原発マネー』の呪縛を絶たねばならない」(『SIGHT』)は、かつて「原子力ルネッサンス」をかかげた米国が、その後、シェールガス・シエールオイルの採掘可能化(シェール革命)によってエネルギー政策を転換し、欧州でも、電力会社の独占の見直しで自然エネルギーの普及が急速に進むなど、もはや原発が「必要なくなった」世界の流れを説明。核廃棄物の処理に数万年を要し、後代に莫大(ばくだい)な負債を残す原発の特性を示しながら、採算性・経済性の面で原発は「割に合わない」ことを強調します。その原発産業に安倍政権が固執する大本に、「政治献金」「原発マネー」による利権構造があるとする、中野氏の指摘は重要です。

金子勝(慶応大学教授)

 金子勝(慶応大学教授)「原発は日本経済を衰退させる大不良債権 屋台骨が傾(かし)ぐ電力会社、重電機メーカー」(『ジャーナリズム』)も、東芝の巨額損失、三菱重工や日立の原発部門の経営不振、米国やドイツの重電機メーカーの相次ぐ原発撤退など、世界で原発が「衰退産業」となっていることを明らかにします。日本経済の衰退を食い止めるには、「脱原発を突破口にした新しい産業構造と社会システム」への転換が必要だとする、金子氏の提起は示唆に富むものです。

日本の核武装を警戒する諸外国

 原発をめぐっては、使用済み核燃料の「再処理」の名で大量のプルトニウムを保有する日本が、アジア諸国や米国から「核武装」を警戒されていることを報じた『週刊東洋経済』(3月25日号)の特集にも目を引かれました。

 原発推進が、産業政策としても、外交にとっても、有害であることが浮き彫りとなっています。

規制緩和による住宅の過剰供給

 空き家の急増が日本社会の重大問題となるなか、『中央公論』で「空き家問題」の特集が組まれました。

藻谷浩介(日本総合研究所主席研究員)

 藻谷浩介(日本総合研究所主席研究員)「お台場の超高層マンションが『負け組』になる日」は、首都圏、大阪府、愛知県の空き家・空き室の数を示し、「空き家問題」が特に都市部で深刻化している実情を指摘。その背景に、経済が成長すれば不動産需要も上がり続けると主張し、「規制緩和」によって住宅の「過剰供給」状態をつくり出してきた、歴代政権の失政があることを解明しています。

野澤千絵(東洋大学教授)

 野澤千絵(東洋大学教授)「産官民がっくり出した『住宅過剰社会』の歪(ゆが)み」も、住宅・建設産業や金融業界の短期的な収益確保のため、分譲マンションや新築住宅を野放図に増やし続けてきた政官財の癒着構図を究明。住宅総量・居住地面積に対する規制の導入、新築物件の「既存の街」への立地誘導、中古住宅市場の成熟化、住宅ローン税制の見直しなど、都市・住宅政策の転換を訴えます。

 日本社会の現実と、古い経済・産業政策の矛盾があらゆる分野で噴出し、抜本的改革が避けられないことが明らかとなっています。

(たにもと・さとし)

(「しんぶん赤旗」2017年3月29日より転載)