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高浜原発差し止め覆す・・大阪高裁 不当決定に住民抗議 & 大飯原発訴訟福井弁護団が声明発表

京都新聞より転載(引用=山本雅彦)

 大阪高裁(山下郁夫裁判長)は3月28日、関西電力高浜原発3、4号機(福井県高浜町)の運転差し止めを命じた大津地裁の仮処分決定(2016年3月)を不服とする同社の抗告を認め、同決定を取り消しました。仮処分は、福井県に隣接する滋賀県の住民29人が申し立てたものです。住民からは「断固再稼働を許さない」と怒りの声があがりました。

 抗告審で住民側は、いまだに福島原発事故の原因が明らかになっておらず、適正な安全基準を策定すること自体が不可能で新規制基準には合理性がないと主張。関電が設定した基準地震動(想定される地震の揺れ)や津波予測が過小で安全性が確保されず、各自治体が策定する避難計画に実効性・合理性がないことなどを指摘し、原発は再稼働すべきでないと主張しました。

 大阪高裁の今回の決定は、新規制基準に適合していれば安全だという立場に終始。井戸謙一弁護団長は「新たな″安全神話″とも言うべきもの」だと批判しました。

 申立人の木谷千加子さん(63)=滋賀県彦根市=は「福島原発事故が終わったかのように再稼働を推進する司法と政府のやり方は絶対に許せません。これからも福島の人たちと一緒に頑張りたい」と語りました。 

「再稼働認めぬ」・・滋賀知事

 大阪高裁が関西電力高浜原発3、4号機(福井県)の運転を容認する決定を出したことを受け、滋賀県の三日月大造知事は28日、「実効性ある多重防護体制の構築や使用済み核燃料の処理が未整備であり、再稼働を容認できる環境にはない」と述べました。記者団の質問に笞えました。

(「しんぶん赤旗」2017年3月29日より転載)


関西電力高浜原発3、4号機(福井県高浜町)の運転を巡る仮処分の抗告審で28日、大阪高裁が出した決定の要旨は次の通り

【安全性の判断方法】

東京電力福島第1原発事故の反省と教訓を踏まえ、原発の安全性審査に関する体制は強化された。原子力規制委員会により策定された基準に適合する原発は、審査の過程に不合理な点がない限り安全性を具備すると考えられる。

関電は原発の設置者として施設、設備、機器に関する安全性の資料を全て保有する。新規制基準に適合することはまず関電が立証すべきで、不十分な場合は住民の生命や身体を侵害する具体的危険があると推認される。

【地震への安全確保】

新規制基準を踏まえ、関電は震源地を特定した場合、特定しない場合の基準地震動をそれぞれ策定した。関電が用いた関係式や震動予測の手法は、原子炉設置許可の審査などで合理性が検証されて広く用いられるもので、本件原発の基準地震動が過小だとは言えない。

策定に伴い関電は、約830カ所に及ぶ耐震補強工事を実施した。安全上重要な設備については、基準地震動への抵抗力を解析した結果、定められた許容値を下回ることも確認した。規制委は本件原発が新規制基準に適合することを確認した。

住民側は熊本地震(2016年)を受け「本件原発の安全性審査で、基準地震動に相当する揺れが連続して発生する事態を全く想定していない」と主張する。だが関電の地震動評価は詳細な調査に基づき、保守的な条件設定の下でなされており、基準地震動は十分な大きさだ。地域的な特性も踏まえると、本件原発が基準地震動に相当する大きさの地震動に襲われる可能性は非常に低く、連続して発生することはほぼあり得ない。連続して襲われたとしても、本件原発の安全性は確保されると言える。

【津波への安全確保】

関電は過去の津波についての文献、堆積物を調査したが、本件原発の安全性に影響するような記録や痕跡は認められなかった。海上音波探査などの結果に基づき、最も水位の影響が大きくなるケースを抽出し、基準津波を策定した。また津波が防潮堤などの設置された敷地に流入せず、海水ポンプが安全機能を保持できることも確認した。

【原子力災害対策】

新規制基準は「深層防護」の考え方に基づき、自然的な立地条件、事故防止に関わる安全確保対策に加え、対策が功を奏しない事態を想定した重大事故対策を講じることを求めており、炉心の著しい損傷を防止する確実性は高度なものだ。

加えて原子力災害対策は、原発で炉心の著しい損傷が生じ、原子炉格納容器が大規模破損するなどして放射性物質が周辺環境へ異常放出される事態をあえて想定し、防護を目的として講じられる。また避難計画は事業者だけでなく、国や地方自治体が主体となり、連携して責務を果たすことで適切に実施される。

本件原発については国、自治体、関電、自衛隊、警察等の関係機関の役割が「高浜地域の緊急時対応」としてまとめられ、避難訓練の結果に基づき改善の取り組みも行われている。避難計画等の原子力災害対策にはさまざまな点で改善の余地があるが、取り組みの姿勢は適切なもので、不合理な点は認められない。

【福島第1原発事故】

設備の具体的な損傷状態や原因について一部未解明な部分が残されているが、各事故調査委員会の調査により、事故に関する基本的な事象は明らかにされている。調査で得られた教訓を踏まえ、原子力安全委員会や原子力安全・保安院、規制委で最新の科学的・技術的知見に基づき、基準地震動の評価、津波への安全性、重大事故対策などの検討が重ねられ、新規制基準が策定された。基準が事故の原因究明や教訓を踏まえていない不合理なものとは言えない。

【結論】

本件原発の安全性が欠如しているとの証明があるとは言えないから、運転差し止めを認めた大津地裁の仮処分決定を取り消し、住民側の申し立てを却下すべきだ。

(共同通信より引用)


大飯原発訴訟福井弁護団が声明発表・・人権を擁護する司法の責任を放棄

福島事故前に歴史を逆行させ,人権を擁護する
司法の責任を放棄した不当決定に,強く抗議する

大飯原発訴訟福井弁護団

2017年3月28日

 本日、大阪高等裁判所は、昨年3月9日に大津地方裁判所が出した関西電力高浜原発3,4号機の運転差止仮処分命令及びこれを認可した昨年末の大津地裁決定に対する関西電力の抗告を認め、大津地裁決定を取り消してしまいました。
 今回の決定は、一言でいえば、福島原発事故前の原発訴訟のあり方に対する反省を欠き、福島原発事故以前の最高裁をも超える極端な安全審査追認の姿勢を示し、「二度と福島のような事故を起こしてはならない」との住民の声に背を向けて、人権を擁護する司法の責任を放棄した、不当きわまりない決定です。
 今回の大阪高裁決定で驚愕すべきは、福島原発事故を機に、司法にも事故の責任があったと世論から強く非難されてきたにもかかわらず、行政による安全審査の問題点に真摯に目を向けることなく、電力事業者は「本件各原子力発電所が原子力規制委員会の定めた安全性の基準に適合することを、相当の根拠、資料に基づいて主張立証」すればよいなどという、福島原発事故以前に出された伊方最高裁判決でも言わなかった判示をしていることです。かかる判示は伊方最高裁判決等の最高裁判例に抵触するもので、とりわけ福島原発事故を経た今日においてかかる判示を行うのは、法理論として完全に破たんしています。
 周知のとおり、今年3月17日の前橋地裁判決では原発の地震・津波対策をめぐる訴訟で東電、さらには国の過失が認められ、同事故が、人の命よりも原発の稼働を優先させる国の政策によってもたらされたことが改めて明らかになりました。地震学者の島崎邦彦氏らは既に2002年に、「福島沖を含む日本海溝沿いでマグニチュード8級の津波地震が30年以内に20%程度の確率で発生する」という内容の長期評価を発表していたのです。しかし、東電も国も、こうした島崎氏らの指摘を無視し続けてきました。
 同事故を経た今日においてもなお、政府や電力会社は、大飯原発の基準地震動評価を過小評価とした島崎氏らの警告を受け止めないなど、同事故の反省がない形ばかりの「安全対策」で原発を再稼働させようとしています。私たちが闘っている大飯原発訴訟でも、島崎氏の陳述書によって、現在の安全審査においてもなお,基準地震動の過小評価がなされていることが明らかになりました。
 このように現在においても安全審査のあり方に重大な疑問があるのであり、大津地裁決定はそのことを正当に指摘して、原発の再稼働を差し止めましたが、今回の大阪高裁決定は、逆に全く安全審査の問題点には目を向けず、関西電力が安全審査によって安全が確認されたことを主張立証しさえすれば、それで電力側の立証責任は果たされたとする,異常な行政追認の姿勢を示したのです。これでは、第二の福島原発事故の発生は避けられません。 
 ひとたび重大な原発事故が起これば、その被害が償いきれないものになることは明らかであり、今日における司法判断は、かかる事態が万が一にも起こらないという観点からなされなければなりません。
 福島原発事故後6年を経ても、いまも被害が拡大し続けている現状を前に、司法は改めて人権の最後の砦としての役割に立ち返るべきです。私たち弁護団一同は、最高裁判決すら無視して人権擁護の責任を放棄した、この不当決定に強く抗議するとともに、来たるべき島崎邦彦氏の証人尋問などを通じて、規制委員会の判断が今日の科学的知見を踏まえていないこと、本日の大阪高裁のような不当な判断基準が法理論として許されないこと等を強く訴え、歴史的な一審判決を維持・発展すべく、全力を尽くしていきます。

(2017年3月29日、引用=山本雅彦)


高浜 3・4 号機 大阪高裁仮処分の不当決定に対する声明

2017 年 3 月29日

福井から原発を止める裁判の会
サヨナラ原発福井ネットワーク

 3 月28日 、高浜3・4 号機仮処分を覆す抗告審の決定が大阪高裁で出されました。

 この決定は昨年の大津地裁の決定に徹底的に反するものです。大津地裁決定で規制委員会が許可したという事実によっては原発の安全性が示されたとはいえない、新規制基準が福島原発事故に学んだものなのか不安を覚えざるを得ないと明確に述べ、司法の役割がいかに重要かを示してくれました。

 しかし、今決定で、山下郁夫裁判 、杉江佳治裁判官、吉川慎一裁判官は、関西電力は原子力規制委員会の新規制基準を踏まえて想定される最大規模の地震や津波の対策を取っており安全は保証されているとしました。また大津地裁で避難計画は国主導でおこなうべきであるとした決定が、「新規制基準が避難計画など原子力災害対策を規制対象にしていないのは不合理ではない」と述べています。そもそも世界標準となっている深層防護(多段階の安全対策)の5層にあたる「住民避難」が抜け落ちている新規制基準は世界標準を満たしていない。しかし今決定では「避難計画等の災害対策については、様々な点において改善の余地がある」と言いつつ深層防護は決定の判断に加えることを避けました。

 従って今回の大阪高裁の決定では原子力規制委員会の考え方がそのまま司法の判断となっており、独立した司法は必要ないことになります。これは福島第 1 原発事故以前の司法の姿であり、大阪高裁は福島第 1 原発事故がもたらした甚大な被害から何も学んでおりません。

 世論は原発の稼働を望んでいない、使用済み燃料の処分方法が決まっていない、 等々危険きわまりない原発を動かす根拠はどこにもありません。とりわけ近年は地震の活動期に入っているとわれ、地震列島といわれるこの地で原発を動かすのは危険行為です。私たち住民は福島の被災者の辛苦をおもいつつ、いつ同じ道をたどるかと心配でなりません。

 福島事故を慮る司法の反省も見られない今決定を下した 3 人の裁判官の責任は大変重い。

 しかし、私たちは原発を止めるために、最後まであきらめずにあらゆる方法を通じ闘い続けます。

(引用=山本雅彦)