【パリ=島崎桂】フランス・パリで3月25日、「福島原発事故6年追悼の夕べ」が開かれました。東日本大震災発生時に救助活動にあたった福島県浪江町消防団の実話を基にしたアニメーション映画「無念」(いくまさ鉄平監督)を上映したほか、避難生活を送る福島県の被災者らが、今月末での避難指示解除(帰還困難区域を除く)を前にした不安を語りました。
「無念」を制作したのは、被災他の昔話や被災体験を紙芝居にして保存、語り継ぐ「浪江まち物語つたえ隊」と、いくまさ監督が事務局長を務める広島市の市民団体「まち物語制作委員会」。
描かれたのは、地震と津波に襲われた町民の救助に向かいながら、原発事故で救助活動の断念を余儀なくされた消防団員の苦悩と後悔。「助かった命あったべ」「原発さえなければ」と悔やむ登場人物の姿に、観客は涙をぬぐいながら見入りました。
いくまさ監督は「広島や長崎への原爆投下で、多くの命とともに文化も失われたといわれている。東日本大震災の被害を見たとき、同じように地域の物語や文化が失われていくと感じ、一つでも多くの物語を残したかった」と語ります。
上映後に福島の被災者4人を交えた交流会が行われました。
浪江町で農業を営んでいた「つたえ隊」の岡洋子さん(福島市に避難中)は、避難解除語も浪江町には定住せず、将来的な農業再開に向けて定期的に畑の手入れだけは続けていくといいます。
「10年、20年と続く作業になるかもしれないけど、今できるのは土を守ることだけ。『復興』という言葉はまだ使えない」
(「しんぶん赤旗」2017年3月29日より転載)