“福島原発事故6年 避難自治体は今” 31日に避難指示大半で解除の飯舘村・・除染・生活…課題は山積/ごみ収集半減・郵便1ヵ所・金融大幅減
福島県飯舘村では31日に大半の地域で、東京電力福島第1原発事故にともなう避難指示が解除されます。復興庁が1月に行った調査(回答率44・7%)では村民のうち、「戻りたい」が33・5%、「戻らない」30・8%、「判断がつかない」19・7%です。
私らは難民だよ
福島市内の仮設住宅で暮らす佐藤典雄さん(70)は、飯舘村で農業を営んでいました。「ここを出なきゃならないとなると、村に帰るしかない。希望があるというわけではない。私らは難民だよ」と話します。
今から農業をやり直すには年齢的にきついという佐藤さん。「国と東電は原発は安全だといって、こんな大事故を起こしたのに、それでも再稼働を進める。何か狂っているのではないか」と憤ります。
同じ仮設住宅に住む高橋好明さん(85)は1人で村に戻る予定。「私は水に流された、ありんこのようなものです。国と東電には賠償と生活保障をお願いしたい」と話します。
震災前と比べ、村の様子は激変しました。▽可燃ごみ収集は週2回から1回▽交通量は工事車両などが増え倍増▽郵便局・簡易郵便局は6ヵ所から1ヵ所▽金融機関(ATMのみを含む)は10ヵ所から4ヵ所▽診療所は1ヵ所と変わらないが、週6日開業から週2日開業―。(一般社団法人「いいたでネットワーク」まとめ)
村の数ヵ所に除染で出た廃棄物を入れたフレコンパックが山のように積まれています。
放射線量を測る
帰還に向け長期宿泊している農家の花井文雄さん(75)は「家の裏山は20メートル四方の範囲でしか除染されていない。田んぼの排水路もつまったままだ。まだ生活するうえでは課題が多い」と話します。
昨年10月の村長選で「国、東電いいなり村政の転換」を訴えて善戦した、佐藤八郎元村議(65)と一緒に、村の線量計を借り、放射線量を測って回りました。
村役場のモニタリングポストは毎時O・31マイクロシーベルトですが、隣接する木の植え込みでは1・17マイクロシーベルトなど、放射線量はまだら状態です。政府が除染の長期目標とする追加被ばく線量の毎時O・23マイクロシーベルトを上回っています。
佐藤さんは「帰還は『初めに村民との協議・合意ありき』が基本なのに、スケジュールありきで進められている。村民が主人公の立場で国と東一電の責任を果たさせていく村政への転換が必要だ」と話しています。(おわり)
(このシリーズは伊藤佑亮、柴田善大、福島県・野崎勇雄が担当しました)
(「しんぶん」赤旗2017年3月27日より転載)
東電福島第1原発・・この1週間
■3月22日 1号機原子炉格納容器内のロボット調査が終了。18日に開始し当初の予定を1日延長しました。原子炉圧力容器を支える筒状の台座の外側10力所で、線量計と水中カメラをロボット本体から垂らして調べましたが、溶け落ちた核燃料(デブリ)は確認できませんでした。ロボットは回収しました。
■同日 3号機原子炉の注水が約1時間にわたり停止した人為的ミス(昨年12月5日)をめぐり、原子力規制庁は、東京電力の再発防止策の範囲が不十分だと指摘。3月に実施した保安検査の結果(速報)で示しました。東電はこれまで、操作スイッチハンドルの取り外しや、計器保護カバーの取り付けなどの対策を挙げていました。同庁は、敷地外への影響を指摘し、空気中の放射線を監視する装置にも対策を講じるよう求めました。
■同日 2号機原子炉注水量を毎時約3トンまで低減。汚染水の発生量を抑制するため、毎時約4・5トンだった注水量を3月7日から段階的に減らしていました。東電によると、原子炉圧力容器底部温度などに有意な変動はないといいます。
(「しんぶん」赤旗2017年3月27日より転載)