いまだに新たな問題が見えてきます。
新潟県では昨年、野党5党と市民が推す米山隆一知事が誕生しました。東電事故の検証を進めている県の技術委員会委員をしていますが、米山知事は、これまでの技術的検証に加えて、健康被害の問題、避難の問題への検証が必要と指摘しています。福島事故を見る際の重要な示唆です。
福島原発事故ではソフト面の対応が遅れたり、対応できなかったところに大きな問題があります。被害の実態の検証とともに、深層防護で第5層といわれる、避難など被害の拡大を防ぐ対策の問題が全く手付かずです。
福島の事故を受けて原子力災害に備えて避難計画などを策定する範囲は30キロに広がりましたが、いざという時の行政の体制や枠組みはほとんど旧来と変わりありません。また、規制基準にも第5層は考慮されていません。
原子力規制委員会の委員長は規制基準に合格しても絶対安全はないと言っています。しかし、自治体の知事や市長は、国がお墨付きを出したから安全となる。新たな安全神話です。規制基準は、福島原発事故の教訓を正しくとらえていません。特に住民の被ばくや自治体の対応についての福島原発事故の検証は、ほとんどされずに作られた基準です。
抑えられた声
県技術委員会が申し入れた調査から、東電が炉心溶融の基準を社内マニュアルで持っていながら、事故後長期にわたり炉心溶融を認めず、判断基準がなかったと言ってきたことが明らかになりました。
東電の中でも、事故直後から炉心溶融だと思っていた人がかなりいたと聞いています。それらの人の声が、長いことどう抑え込まれていたかが問題です。
今回、東電の体質の問題が明らかになりました。しかし、この問題は、国の原子力行政そのものの欠陥が出ていると考えるべきです。
同様のマニュアルはほかの原発にあったはずです。炉心溶融の定義はなにも東京電力だけのものではなく、ほかの電力も国も、推定はできたはずです。知らなかったでは済まない。原発利益共同体はそれをずっと黙ってきたのです。
もし知りえなかったのなら、電力会社やそれを規制する旧原子力安全・保安院に知識なかったということで大きな問題です。そこまでまだなかなか踏み込めていませんが、今後も調査を続けていくべきです。
未解明な問題
福島第1原発ではどうして高圧注水系が早期に動かなかったのか。東海第2原発は、早期にポンプ容量の大きい高圧注水系も動かして、冷却に持ち込めたのです。また、事故進展を予測し支援情報が出せるシステムが国費で開発されながら生かされなかったことなど、東電や国の初期対応には多くの未解明な点が残っており、引き続き事故の検証が必要です。
(「しんぶん」赤旗2017年3月20日より転載)