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原発避難 群馬訴訟判決・・「人災」と認定/弁護団声明 & 前橋地裁判決要旨

 東京電力福島第1原発事故で群馬県内に避難した住民らが損害賠償を求めた訴訟で、国と東電の賠償責任を認めた前橋地裁判決を受け、同訴訟の弁護団「原子力損害賠償群馬弁護団」(鈴木克昌団長)は3月17日、声明を発表しました。

 同判決が、国の規制権限不行使が違法であったとするなど「極めて大きな意味がある」と強調。一方、慰謝料額では、認定された被害額は少額にすぎ、被害者が受けた精神的苦痛が適切に評価された金額と言えるかについては「大いに疑問がある」とします。

 判決が、津波の予見可能性を認め、国と東電が原発の安全性維持のために求められる真摯(しんし)な姿勢に欠けていたことを指摘することに言及。福島第1原発事故が「『人災』であることを改めて認定したものといえる」と述べています。

十分な賠償を・・日弁連会長談話

 日本弁護士連合会(中本和洋会長)は3月17日、福島原発事故群馬訴訟での前橋地裁判決を受けて、東京電力と国が被害者の住民に対し速やかに十分な賠償を行うことなどを求める会長談話を発表しました。

 原子力損害賠償紛争解決センターに対しては、被害者の個別事情に応じた賠償の和解仲介を行う運用に努めることを求めました。国に対して、応急仮設住宅と民間借り上げ住宅の無償提供の今月末での打ち切りを撤回し、適切な措置を講じるよう求めました。

 一方、今回の判決については、事故原因の究明、被害の実情に即した必要十分な賠償など、これまでの同会の要請に十分に応えたものになっているかは検討を要する、としています。 


前橋地裁判決要旨

 東京電力福島第1原発事故で群馬県に避難した人たちが起こした訴訟で国と東電の責任を認めた、3月17日の前橋地裁判決要旨は次の通りです。

【津波の予見可能性】

 2002年7月に国の機関である地震調査研究推進本部が策定した「三陸沖から房総沖にかけての地震活動の長期評価について」(長期評価)は、太平洋の三陸沖北部から房総沖の日本海溝で、M8クラスの津波地震と同等の地震が、公表時から30年以内に20%程度、50年以内に30%程度の確率で発生すると推定した。東電は長期評価公表から数カ月後には、この知見を基に想定津波の計算が可能だった。その計算結果は、東電が08年5月ごろに行った試算結果(敷地南部で海抜15・7メートル)に照らし、本件原発の敷地地盤面を優に越えるものになったと認められる。東電は、遅くとも02年7月31日から数カ月後の時点で津波の到来を予見可能で、上記試算を行った08年5月には、実際に予見していた。

【結果回避可能性】

 配電盤の被水は給気口から浸入した津波による。結果回避措置として、①給気口のかさ上げ②配電盤、空冷式非常用DGの建屋上階への設置③電源車などの高台設置——のいずれかが確保されていれば事故は発生せず、これらは期間、費用の点からも容易だった。

【慰謝料の考慮要素】

 東電は①経済的合理性を安全性に優先させたと評されてもやむを得ない対応を取ってきた②まず津波対策を取るべきであったのに、約1年間で実施可能な電源車の高台配備およびケーブル敷設という暫定的な対策さえ行わなかった③規制当局から危険の指摘を受けていながら長期評価に基づく対策を怠った——ことなどを指摘できる。そうすると、東電には特に非難に値する事実があると言うべきで、慰謝料増額の考慮要素になる。

【規制権限不行使】

 国は遅くとも、耐震バックチェック指示に基づく中間報告書の提出を東電から受けた07年8月時点で、被侵害法益が極めて重要で、かつ、その被害者が極めて広範に及び得る原子力産業について、規制権限を適時かつ適切に行使して原子力災害の発生を未然に防止することが強く期待されていた。安全設備を浸水させる危険性のある津波到来が予見可能に至った02年から約5年が経過し、東電による自発的な対応や、国の口頭指示によって適切な津波対策が達成されることは、およそ期待困難な状況に至っていることの認識もあった。これらの点に照らすと、国は遅くとも07年8月ごろには、東電に対し、結果回避措置のうちいずれかを講じる旨の技術基準適合命令を発すべきだった。これらの規制権限を行使すれば事故を防げだのだから、行使しなかったことは著しく合理性を欠き、国賠法上違法だ。

【国の賠償責任】

 国の責任は東電に対して補充的とは言えず、これを制限することはできない。国が賠償すべき慰謝料額は、東電が賠償すべき慰謝料額と同額と考える。

(「しんぶん赤旗」2017年3月19日より転載)