福島では今なお8万人近い県民が避難を強いられ、東京電力福島第1原発事故が収束しないのに、政府が一方的な避難指示解除とあわせて、賠償や自主避難者への住宅無料提供の支援などを打ち切ろうとしています。生活と生業(なりわい)を再建し、被害がある限り賠償を継続させることがますます重要になっています。
時期尚早だ
政府は、3月31日で飯舘村、川俣町山木屋、浪江町、4月1日で富岡町の帰還困難区域を除く避難指示を解除する予定です。しかし、いずれの住民説明会(懇談会)でも解除は「時期尚早だ」という声が上がりました。
昨年6月には葛尾村と川内村、7月に南相馬市小高区が避難解除されました。川内村では希望を抱いて帰還したものの次第に絶望に変わった30歳代の夫婦が、南相馬市小高区では丹精込めた自分の田に積まれた除染廃棄物に絶望した90歳代の農家男性が、それぞれ自殺しました。昨年末までの関連自殺者は87人。福島県での最新の災害関連死者数は直接死を3割以上も上回る2131人。避難者の孤独死も相次いでいます。
悲劇を繰り返させないためにも被災者に寄り添った、ていねいな支援が求められます。日本共産党県議団は県議会で生活支援相談員の果たす役割が大きいと述べ、配置数を大幅に引き上げ、増員するよう県に求めました。
また長期避難のため健康を害する人が増加しており、医療や介護の保険料、利用料減免の継続も重要です。県民が元の生活を取り戻すには、除染の徹底が必要です。
一方、県民の生活と生業の再建、地域経済の再生に賠償は欠かせません。県も県民も 「被害がある限り賠償の継続を」とオール福島の要求を求めてきました。ところが、国と東電は賠償打ち切りを加速させています。
今春、帰還困難区域を除く避難指示を解除すると、来年3月末で精神的賠償が打ち切られます。帰還困難区域の住民はすでに6月以後分が故郷喪失慰謝料として賠償済みとされ、すべての避難区域の精神的賠償が終了することになります。
新たな苦悩
一昨年9月の避難指示解除とともに楢葉町に戻った早川篤雄さん=住職=は言います。
「避難指示が解除されたら精神的被害がなくなるかと言えば、そんなことはありません。コミュニティーも含めて元の生活に戻ったわけではなく、精神的負担はますます増えるばかり。むしろ新たな苦悩の始まりです。帰ってきたものの展望がなく、生きる意欲までなくなる。そういう現実が突きつけられています。解除で終わりにさせてはならない」 (つづく)
(「しんぶん」赤旗2017年3月15日より転載)