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“福島第1原発事故6年 専門家に聞く”ゼネラル・エレクトリック社の元技術者 佐藤暁さん・・深層防護の欺まん

 東京電力福島第1原発事故から6年がたち原子力規制委員会は、すでに12原発が規制基準に適合したとの判断を示しています。事故の反省を踏まえて策定したとする新規制基準ですが、事故の究明は道半ばです。事故からくみとるべき教訓は何か。5人の専門家に聞きました。随時掲載します。(松沼環)

 6年たって最も残念に思っているのは、関連死の問題です。東日本大震災の関連死は福島県では現在も増え続け2000人を超えています。同じ被災地でも宮城県や岩手県では、直接的な被害は甚大でしたが、関連死は、福島が圧倒的に多いのです。

続いた関連死

 開連死した人たちは、放射線の被ばくの影響で死んだわけではありません。しかし、原発事故の影響で亡くなっている。しかも2年、3年とたっても、有効な対策が示されませんでした。

 IAEA(国際原子力機関)のいう深層防護の最終層は、原子力防災を含む第5層です。しかし、福島事故をみると、第5層は、最終的にそこで食い止めるというバリアーになっていません。最終的なセーフティーネットになっていない。仮設住宅や賠償金などあっても犠牲が続いた。

 一人でも開連死を防ぐことはできなかったのか、研究者や行政、メディアが真剣になるべきです。もしかしたら、答えがない問題かもしれません。原子力には、そういう答えがない問題が縦に横にいっぱいくっついていると感じます。

 第5層までを充実させれば、原子力の安全の枠組みは万全という印象を与えますが、それはとんでもない欺痛(ぎまん)と誤謬(ごびゅう)です。

 事故の反省で第一にいえることは、″自己満足″といわれます。あの時こうしていれば、福島第1原発事故は防げたということはたくさんあります。

 すでに80年代に、当時の通産省や電力会社などが米国の津波・地震対策などの視察をしましたが、その結果が生かされなかったとか。あの事故は1号機から始まりましたが、もしも、運転開始から40年を目前の1号機を廃炉にすると決めていたらとか。地震の設計基準が国内で何度も超えていたことを警告ととらえていたらとか…。

 多くの警告がありながら無視してきた。この程度でいいだろうと自己満足して対策を実施しなかったのです。

 ところが、事故後も同じような自己満足が繰り返されています。

また安全神話

 事故直後にも、100年に1度の津波なのだからしょうがない。東京電力は不運だったというような話が産業界などから出されました。原子力に求められる安全のレベルからすれば、1000年に1回も起きるととらえるべきなのに、です。そういうものを一つ一つ見つけて打破しなくてはいけないということが、反省のはずです。しかし、また安全神話が復活しています。

 その代表格が、日本の規制基準を「世界最高水準」と呼ぶことです。さらに、基準ができるとそれを守れば安全なつもりになる。幼稚なロジックが繰り返されています。

 

深層防護 安全をいくつかの層に分けて、層ごとに対策を徹底させて全体の安全性を高める考え方。IAEAの深層防護の考え方は、第1層の異常運転や故障の防止から、第5層の放射性物質の大規模な放出による放射線影響の緩和まで、全5頭からなります。

(「しんぶん」赤旗2017年3月14日より転載)