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“対談③”館野 国民の合意欠く再稼働/野口 食品検査と除染が大切

舘野淳さん(右)と野口邦和さん

原発事故6年 社会的状況

―原発事故後の社会的状況について。どう考えていますか。

 野口邦和・日本大学准教授(放射線防護学)

 福島県の水産物に含まれる放射性物質濃度は、海水魚のなかで減り方が遅い底魚のシロメバルでも、この2年くらい基準値(1キロ当たり100ベクレル)超えはありません。海水魚に比べ、濃度が下がりにくい淡水魚のアユでも低減傾向にあります。

 米は全袋検査が行われており、基準を大きく下回っています。

 基準値を超えているのは、イノシシなどの野生鳥獣肉、山菜など栽培・飼育管理されていないものがほとんどです。

 事故に由来する県民の内部被ばく線量は、年間1マイクロシーベルト前後です。食品をしっかり検査して、汚染されているものは出荷させないという徹底した食品管理の結果だと思います。

 外部被ばく線量については、丁寧な除染が大切です。私か「放射線健康リスク管理アドバイザー」をしている福島県本宮市の例を紹介しましょう。市内に住むある兄妹の場合、除染作業をした幼稚園に兄が入園すると、追加被ばく線量は妹の半分になりました。その後、自宅の除染作業が終わると、入園前の妹も半分に。除染の効果が表れていることがよくわかります。

 政府は3月末で、掃還困難区域以外の避難指示を解除する方針です。指示が解除されたとしても、地区のいっそうの除染が大切です。

 また、指示が解除されたからといって、すぐに元の家に戻れるとは限りません。戻らない人が。〝自主避難″扱いされ、公的補償が受けられないという、大きな問題が出てくるでしょう。

 舘野浮・元中央大学教授(核燃料化学)今後の廃炉作業に伴い、膨大な量の放射性廃棄物が出てくることになります。処分の方法を決めていかなければいけない。そのために、国民の合意が必要です。放射能問題とどう向き合っていくのか、国民的に考えるべきでしょう。

 一方で、国や電力会社は、四国電力の伊方原発、九州電力の川内原発など再稼働を進めています。しかしこの問題でも、国は“原発を続けますか”と国民の意見を聞くことなく、いきなり原子力規制委員会をつくって、既成事実を積み重ねてきました。

 これまでも国は、国民の反対世論があっても、とにかくどんどん進めていき、その中で安全神話が出てきました。

 福島第1原発事故を受けて、国民の合意として原発をやめるのか、それとも、リスクが高くても続けるのか。根本的な議論がなされていません。再稼働問題を考える上で、最も欠いている点です。  (つづく)

(「しんぶん」赤旗2017年3月12日より転載)