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“対談②”館野 県民が海洋放出を許さず/野口 トリチウム水は当面保管

放射能汚染水をためるタンクが林立する福島第1原発構内=3月3日(本紙チャーター機から、三浦誠撮影)

原発事故6年 汚染水増加

 ―何十年か続く廃炉作業で、作業員の被ばくをどう抑えるか、課題になります。

 野口邦和・日本大学准教授(放射線防護学)東電と関連会社を合わせ、毎月1万人近い労働者が、廃炉作業に関わっています。事故直後と比べれば被ばく線量は年々低減しています。事故前と比べても今年度は2倍程度。デブリの取り出しが本格化すると、高線量の被ばく作業員が出てくることが心配です。

 舘野淳・元中央大学教授(核燃料化学)汚染水処理設備を調査するため、昨年、原発の構内に入りました。軽装で移動できる範囲は広がりましたが、重要な作業の場所では、全面マスクを着けます。

 重装備では注意力が散漫になり、作業は大変危険だと思います。さらに、デブリ取り出しとなると、そういう作業環境にならざるを得なくなるでしょう。

 野口 被ばくも考出すると、長時間の作業は無理。遠隔操作でどれだけできるか、技術開発も必要です。

 原子炉内部の状況がよく分からないまま、作業員の被ばく線量が増えていくのであれば、デブリの取り出し方針を大幅に見直さなければならない可能性もあります。

 40年かかるといわれている廃炉が2051年に完了するなら、私は99歳。原発事故は世代を超えて監視して見守っていく必要がある。大変な事態です。

 ―高濃度の放射能汚染水がたまっている原子炉建屋に地下水が流入することで、現在でも毎日約200トンいの汚染水が増え続けています。総量は100万トンを超えています。

 野口 汚染水対策の焦点は、「漏らさない」から、地下水を汚染源に「近づけない」ことになってきたと思います。

 具体的には、建屋周囲の井戸や、構内の山側の井戸から地下水をくみ上げたり、雨水が地中に染み込むのを防止するため地表を舗装したりしています。

 国費345億円を役人して、建屋周囲の地下に氷の壁をつくる凍土遮氷壁(陸側遮氷壁)を、昨年3月から運用しています。

 掛けた費用に見合った効果があるのか疑問ですが、建屋地下への地下水の流入量は減り、汚染水の発生量は減っています。さまざまな対策の成果です。ただ、これ以上減らすには、凍土壁の成否がカギになると思います。

 舘野 汚染水問題の今後の課題の一つは、汚染水処理装置で取り除けないトリチウム(3重水素)を高濃度に含む汚染水の処分方法になると思います。現在、アルプス(多核種除去設備)処理水約73万トンをタンクに貯めています。

 野口 くみ上げた汚染地下水を海洋に排水する場合、トリチウム濃度の運用目標は1リットル当たり1500ベクレル。国の放出基準(告示濃度限度)の同6万ベクレルの40倍厳しい運用目標です。

 事故を起こした当事者として東電は、住民の合意が得られない限り、運用目標を超えた汚染水は放出しないと宣言しました。ただ、将来にわたり抱え込めるでしょうか。

 舘野 福島県の住民感情を考えると、高濃度のトリチウム水を海に流して処分してしまうことはできません。

 米スリーマイル原発事故(1979年)の場合は、大気中に蒸発させる方法を取りました。

 野口 海洋放出は、放射性物質濃度が下がっていても魚は売れないという「風評」問題があり、住民との合意は難しいと思う。

 トリチウムの半減期は約12年ですが、放出できる濃度に下がるまで液体を管理するのは大変なこと。固化すれば漏れる危険性はなくなりますが、そこまで東電にやる気があるか。当面は、トリチウム水をそのまま保管することになるのではないか。     (つづく)

(「しんぶん」赤旗2017年3月11日より転載)