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浪江町 31日に避難指示解除・・被害続いているのに 住民各地で「時期尚早だ」

入居して間もない復興公営住宅の前に立つ紺野さん=福島市

福島原発事故6年 避難自治体は今

 東京電力福島第1原発事故のため全町避難が続いている福島県浪江町は、31日に帰還困難区域を除き避難指示解除されます。双葉郡一の人口を有し、これまでの避難区域で最多の解除対象です。町民の間から「時期尚早だ」との声も上がっています。

 解除の対象になるのは避難指示解除準備区域7469人、居住制限区域7858人で、合計1万5327人。帰還困難区域は住民数3137人です(1月末時点)。

 同町の馬場有(たもつ)町長は2月27日の町議会全員協議会で「浪江町を残すためには解除時期を先延ばしすることなく、(政府案の)避難解除を受け入れることが必要だ」と表明しました。

 生活ができない

 長男、4男とともに自動車修理業を営んでいた紺野重秋さん(79)は車検約300台を含め年間約2000台扱っていました。原発事故後は4男が他県に移住し、福島市で長男を中心に仕事を再開したものの、扱い台数はかつての約4分の1です。

 復興公営住宅=福島市=に転居した紺野さんは、「今の時点で浪江に帰る町民は1000人ぐらいだろう。その程度帰っても商売にはならない。食堂などの商店も除染や復興関係の客が多いから、土、日曜日は休み。食材も売っていないので生活できない。まだ避難指示解除の時期じゃないよ。私自身は当分帰れないと覚悟している」と言います。

 同町で昨年から実施している準備宿泊の登録者は約700人。ある男性は「暗くて、寂しくて気持ちが押しつぶされそうだ。あんなところにいられない」と一晩泊まっただけで避難先に戻ってしまいました。

 避難指示解除の政府案に対する住民懇談会が1月下旬から県内外で開かれ、各地で「時期尚早だ」との声が上がりました。「事故収束が(避難解除の)一丁目一番地だ。事故収束したのか。収束後に帰還の議論をするべきだ」(二本松市)。「復興とは子どもが外で元気に遊べる町になること。魚もキノコも食べられない。そこに帰ってどういう生活をしろというのか。責任をもって『帰れ』と言えますか」(仙台市)―。

 賠償打ち切りに

 これに対し政府側は「キノコが食べられないのは避難区域だけではない。だから帰れないということにはならない」などと答弁。これを聞いた参加者から「解除ありき、無理やり解除だ」との声が出ました。

 「避難指示解除になれば、賠償や除染が打ち切られる。この復興公営住宅だってそのうち補助がなくなるのではないか。被害は続いているのに」と不安を口にする前出の紺野さん。

 「形だけの復興でなく、事故の収束と原因のきちんとした検証、そして原発ゼロを決断することこそ福島原発事故の教訓だ」と話します。

(「しんぶん」赤旗2017年3月11日より転載)