東日本大震災6年 ・・国は支援を弱めてはならない
約2万人の死者・行方不明者をだした東日本大震災から6年です。大地震と巨大津波、東京電力福島第1原発事故が重なった大規模災害は広範囲に甚大な被害を与え、今なお12万人以上が避難生活を強いられています。復興の歩みも遅れ、避難の長期化の中で、被災者の抱える問題は複雑化し、深刻の度を増しています。
安倍晋三政権が被災地への支援を縮小する動きに出ていることに、被災者の不安といらだちが募ります。支えを必要とする人がいる限り、政治が支援の手を弱めることがあってはなりません。
家賃の増加に将来不安も
自宅再建が困難な被災者向けの災害公営住宅は、東北3県でもようやく目標の7~8割が完成しました。仮設住宅から真新しい住宅に移ったのも束の間、多くの被災者が「家賃支払い」の苦しさを訴えます。家賃のない仮設と異なり、公営住宅では家賃が発生するためです。国は“激変緩和”として10年期限の減免措置を設けましたが、入居6年目から段階的に上がり、11年目は今の3倍になる例もあります。年金暮らしの高齢者や仕事が確保できず収入が不安定な人たちは展望が見えません。国は減免延長や家賃補助など仕組みの見直しを急ぐべきです。
老朽化がすすむプレハブ仮設住宅に3万5千人が暮らし続けています。住環境の改善など、きめ細かな対応が必要です。応急修理の制度を使ったため仮設や災害公営住宅に入れず、「壁が段ボール」「風呂は壊れたまま」などの状態で暮らす在宅被災者を放置し続けることはできません。「住まいの安心」を保障することなくして、被災地の復興はできません。支援金の引き上げや対象拡大など被災者生活再建支援法の拡充こそ求められています。
長引く避難生活は被災者の心身を疲弊させています。宮城県民医連が県内4市3町の災害公営住宅で実施した被災者調査でも、生活上の不安のトップが「健康」でした。被災者支援に取り組む「みやぎ県民センター」には「津波ですべてを失いました。いま大腸がんで大変です」「職を失い、不安で精神安定剤が欠かせません」と悲鳴が寄せられ、医療費・介護利用料の軽減の切実さを浮き彫りにしています。国が打ち切った減免制度の復活は急務です。
被災者への支援の立ち遅れがはなはだしいのに、安倍政権は「復興は新たなステージ」などと支援から手を引く姿勢です。16年度からは「被災自治体の『自立』」を理由に、復興事業費の一部を地元自治体に負担させています。
収束しない原発事故でふるさとを追われた福島の被災者に対し「事故は終わった」と言わんばかりに、原発を推進し、避難指示解除と賠償・支援打ち切りをセットで押し付ける政府・東電のやり方は許されません。
従来の制度にとらわれず
6年たって、住まいでも生業(なりわい)でも被災者の困難が打開できないのは、政治がその苦難に真剣に向き合ってこなかったためです。
未曽有の災害には、従来の制度にとらわれない柔軟で大胆な見直しが必要なのに、怠ってきた政府の姿勢が問われます。「私たちの苦しみを繰り返してほしくない」。この被災地の声に応えるのが“災害大国”の政治の責任です。
東日本大震災から6年を迎えるにあたって
2017年3月11日 日本共産党幹部会委員長 志位和夫
東日本大震災と福島原発事故から6年を経過したこの日を迎え、あらためて犠牲となられた方々に哀悼の意を表するとともに、被災者のみなさんにお見舞い申し上げます。復興に向けて、たゆまない努力を続けられている被災者のみなさん、自治体のみなさん、被災地への支援を続けておられる全国のみなさんに心からの敬意を表します。
日本共産党は、被災者の生活と生業(なりわい)を再建し、東日本大震災と福島原発事故からの復興をなしとげるまで、国民のみなさんとともに最後まで力をつくす決意です。
国は復興に最後まで責任を――打ち切り・縮小は絶対にやってはならない
被災地では、住宅再建も、地盤のかさ上げによる商店街や中心街の再建も、まだまだ途上であり、今も12万人の被災者が不自由な避難生活を続けています。
ところが、国は「復興費用は全額国が負担する」という約束を破り、2016年度から被災自治体に一部負担を押し付けるなど、国の被災者支援策、復興策の打ち切り・縮小を進めています。
復興が遅れている地域は、住宅地域でも商店街などの中心街でも、震災の被害が大きかったところです。壊滅的な被害を受けた地域では、前例のない町づくりと商店街再建に取り組んでおり、今までにない支援が求められています。それにもかかわらず復興支援策の縮小・打ち切りを行うことは、被害が大きかった地域、復興への困難が大きい地域を切り捨てることになり、絶対にやってはなりません。
仮設住宅などで避難生活が長期になっている被災者へのケアをはじめ、被災後6年を経過して生じている新たな課題、困難への支援の強化が求められています。被災者の命綱となっている医療や介護の負担軽減は、岩手県や石巻市、気仙沼市などで来年度も継続されますが、国の制度として復活させることを強く要求します。仮設住宅や災害公営住宅での孤立など、被災者の現状に寄り添った支援も強化しなければなりません。被災自治体への全国からの応援が縮小し、職員不足による復興の遅れや過重労働が深刻になっており、国の責任で現状に見合った全国の自治体からの応援態勢を整えることを求めます。
住宅再建支援の抜本的強化、災害関連法の抜本的見直しを
未曽有の大災害から被災者の生活と生業の再建を支援し、被災地の復興をはかる制度があまりにも貧弱であることが被災者と被災自治体に多大な困難をもたらしています。
被災地では住宅再建が正念場を迎えています。住宅再建への支援は、建築費の高騰にもかかわらず300万円に据え置かれたままです。ただちに500万円に引き上げるとともに、復興のかなめでありながら、被災者にとって最も困難が大きい住宅再建への支援を抜本的に強化することを求めます。
津波に流された住宅地や市街地の再建では、本来、災害からの復旧・復興のためにつくられた制度ではない、区画整理事業や防災集団移転事業(災害前に危険な場所から集団移転するための制度)を「転用」せざるを得なかったゆえの苦労や困難に被災者と自治体は直面し、それを解決するために時間がかかり、復興事業が遅れ、被災者の大きな負担となっています。住宅をはじめ事業所や商店などの再建には「個人資産形成になることは支援しない」という「原則」が大きな障害になりました。
東日本大震災以降、熊本地震をはじめ各地で深刻な災害が起きていますが、東日本大震災とその復興に向けた経験が生かされているとはとても言えず、同じ苦労、同じ困難に被災者は直面しています。「私たちと同じ苦しみを、これからの人たちには味わわせたくない」という声が被災者からも被災した自治体からも出されています。
「災害列島」と言われる日本で、自然災害で大きな被害を受けた地域を復興させる制度が整っていない――この深刻な問題が突きつけられています。東日本大震災の未曽有の被害と復興に向けた被災地の苦闘に、政治が真剣に向き合い、災害関連法を抜本的に見直すことを求めるものです。
原発再稼働と輸出のための「福島切り捨て」を許さない
福島では、今でも8万人近くの県民が避難を強いられ、震災関連死(原発事故関連死)が2115人と直接死の1・3倍になるなど、深刻な実態が続いています。福島第1原発は、溶け落ちた核燃料の状況もわからず、あまりの高放射線量に調査さえ難航しています。放射能汚染水も、350億円の国費を投じた「凍土遮水壁」の効果は表れず、「完全にコントロールされている」どころか、解決のメドもたっていません。
ところが安倍政権は、原発再稼働と原発輸出という原発推進政治のために、福島原発事故を「終わったもの」にしようとし、露骨な「福島切り捨て」を行っています。政府は、一方的な避難指示の解除とあわせて、精神的賠償、営業損失賠償、自主避難者への住宅無料提供の支援などを打ち切ろうとしています。原発推進のために、原発事故の被害に苦しむ被災者に、新たな困難を押し付ける政治を絶対に許すことができません。
放射線量が高く、除染が不十分という不安があり、病院・商店街・学校などが復旧していないという現実のもとで、帰りたくても帰れないという現実があります。この現実を変え、被災者の苦しみを軽減することこそ国がやるべきです。
被災者を分断するいっさいの線引きや排除、切り捨てを行わず、すべての被災者の生活と生業が再建されるまで、国と東京電力が等しく支援することを強く要求します。福島第2原発の廃炉という「オール福島」の切実な願いに、安倍政権がまともに応えることを求めます。
日本共産党は、安倍政権の原発再稼働と原発輸出への暴走と福島切り捨てを許さず、「原発ゼロ」の日本を実現するために、国民のみなさんとともに力を合わせる決意をあらためて表明するものです。
(「しんぶん赤旗」2017年3月11日より転載)