「復興道半ばが4割以上」―。本紙が2月下旬に岩手、宮城、福島3県の54市町村を対象に行った被災自治体アンケートの特徴を見てみました。(小山田汐帆)
被災者医療費免除で大きな差
岩手・宮城
被災者の医療費(国民健康保険)と介護保険利用料の免除を2017年度に行うかどうかで、岩手、宮城両県で大きな差が出ました。
岩手県12市町村は1村が「検討中」ですが、11市町村は実施を表明。所得制限もつけないとしています。
宮城県16市町は「行う」が9自治体、「行わない」が7自治体。「行う」市町村はすべて、所得制限をつけるとしています。
両県の違いの背景には、国が財政負担を縮小した中で、岩手県は自治体負担分の半分を出しているのに対し、宮城県は財政負担をしていないことがあります。住民の命と暮らしを守る自治体の姿勢が問われています。
復興の妨げとして、多くの自治体が資材高騰と並んで挙げたのが職員不足です。16年度は岩手県釜石市で27人、宮城県気仙沼市で45人、石巻市で41人となっています。年々職員の確保が厳しくなり、17年度も宮城県名取市では23人の不足が見込まれています。ほかにも、用地取得の難航や作業員の不足が挙げられています。
被災者生活再建支援制度について、拡充が「必要」と回答した市町村の7割が住宅再建費の引き上げを挙げています。
〝資材高騰で費用がかかり再建の妨げとなっている″〝発災当初にある程度高額が支給されると再建が早まる″などの理由を挙げています。
また、「制度に復興をあわせるのではなく、復興に制度をあわせるべきだ」として、復興交付金の柔軟な活用、各種申請手続きの簡略化、地域コミュニティー形成の支援などを求めています。
賠償・除染・健康―課題が山積
福島
福島県では、東京電力の賠償が「十分行われている」との回答はゼロ(有効回答20)。「不十分だ」が半数以上の12自治体、「まあまあ行われている」が8自治体でした。浪江町は、精神的賠償増額について、公的紛争解決機関であるADRの和解案を東電が受諾しないことを批判しています。他の自治体も、原発事故対応での職員増員への賠償がないこと、国が立て替えている除染経費の未払いなど東電の姿勢を批判。「各自治体の賠償請求はほとんど進んでいない。6年が経過し、立証が難しくなっているので迅速な対応が必要」という指摘もあります。
国と東電への要望として、▽確実な廃炉、東電の隠蔽(いんぺい)体質の改善▽除染・は自治体でなく東電が行うべきだ▽放射線量が下がらないエリアの再除染と山林対策▽市町村の裁量を最大限に尊重した財政措置▽原発災害の復興に最後まで国が責任を持つこと―などが出されています。
大玉村は「子どもたちの被ばく検査継続により、将来、何も影響がなかったとなった時に、初めて原発事故からの不安が消え去り、それが福島においての復興」と回答しています。
(「しんぶん」赤旗2017年3月10日より転載)