東京電力福島第1原発事故から6年になるのを前に、本紙記者は2月14日、事故収束作業が続く同原発構内に入りました。東電が、合同取材団に公開しました。作業環境は改善されつつあるものの、廃炉作業を阻む高放射線量。その恐ろしさとともに、原発再稼働に固執する国・電力会社への憤りを覚えました。
1、2号機まで約80メートルの高台。東電の線量計は毎時160マイクロシーベルトを超えています。
目の前にそびえる高さ120メートルの1、2号機排気筒は、支柱に破断が見つかり上部解体が決まっています。肉眼でも赤さびが見えました。
1号機は、建屋を覆っていたカバーが取り外され、水素爆発によってゆがんだ鉄骨がむき出しになっています。
2号機は、水素爆発が起きず建屋は原形をとどめています。しかし、原子炉格納容器内の溶け落ちた核燃料(デブリ)の調査は、ロボットのカメラの不具合で作業が中断したばかり。推定で毎時650シーベルトという極めて高い線量は、今後の作業の困難さを予想させます。
(唐沢俊治)
廃炉へ“まだ登山口”
核燃料取り出しへ、建屋に装置設置進む
福島第1原発の4号機西側のタンクエリアでは、漏えいリスクが高いフランジ型(組み立て式)タンクを解体、撤去し、溶接型タンクの設置が進められています。
フランジ型タンクは汚染水が漏れ出したことがあり、土壌を重機で掘り起こし撤去作業をしていました。被ばくを避けるため、作業員は全面マスクです。
汚染水は103万トン
放射能汚染水は、タンクと建屋地下にたまった分も合わせて約103万トン。このうち、現在の技術で取り除けない高濃度のトリチウム(3重水素)を含む汚染水は72万トンに上り、処分方法は決まっていません。東電は、2020年度まで、タンク容量を確保していると説明。しかし、その後の対策は未定です。
14年に核燃料プールからの燃料取り出しを終えた4号機の西側を通り、3号機へ。3号機はプールから、核燃料を取り出すため、建屋上部に装置の設置が進められています。
取材団が現場を通過した時、クレーンは運転を止め、作業員の姿はほとんど見えませんでした。昼、風が強くなるため、大型クレーンなど風の影響を受けやすい作業は、早朝から午前中に集中しています。
バスは2、3号機の間を通り、海側へ向かいました。数メートル進むごとに東電の担当者が「100、200、300(マイクロシーベルト)」と線量計の数値を読み上げました。
作業環境改善も
事故から6年。作業員の労働環境も改善されつつあります。
構内の放射線量低減や汚染水対策として、表土は、モルタルで舗装するフェーシングにより灰色に変わりました。
震災直後は、ほぼ全域で全面マスクを着用していましたが、現在、構内の9割で防じんマスクと一般作業服で移動できるようになりました。
約1200人を収容できる大型休憩所を2015年から運用。食堂では、温かい食事が提供されています。
取材の日のメニューは「お子様ランチ」など、全て380円です。1人で黙々と食事する作業員や、数人のグループの人たちもいます。時折、笑い声も聞こえました。
同原発の内田俊志所長は、廃炉作業を登山に例え、登山口から登り始めた段階と語りました。何十年続くのかわかりません。
(「しんぶん赤旗」2017年2月16日より転載)