東芝の綱川智社長は2月14日、記者会見し、原発事業の巨額損失を受けた対応策を発表しました。資本増強策として分社する主力の記憶用半導体フラッシュメモリー事業について、当初20%未満としていた外部出資の比率を50%超に引き上げることを検討します。原発事業では、米子会社ウェスチングハウス(WH)の株式を一部売却し、現在87%の保有比率を引き下げる方向です。
綱川社長は昨年12月末時点で負債が資産を上回る債務超過に陥ったことを踏まえ、「一番良い選択肢を柔軟に考える」と資本増強策の見直しを表明しました。分社で発足するメモリー会社の全株式売却も「可能性はある」と否定しませんでした。外部出資を募る入札の枠組みを変更する可能性も出ています。
原発事業では、英子会社ニュージェネレーションの保有株売却も検討する考えです。海外では新たな工事は手掛けず、事業を縮小します。綱川社長は「今後、土木・建築については受注しない」と強調しました。
半導体は主導権を他社に譲ることを検討し、原発は海外事業を縮小する方向性を示しました。
東芝の綱出智社長は2月14日の記者会見で、巨額損失の原因となった米原発子会社ウェスチングハウス(WH)株の売却を探る意向を表明しました。一方、東芝本体の財務改善に向けて、分社化する稼ぎ頭の記憶用半導体フラッシュメモリー事業は過半数の株式売却を許容します。主力2事業の位置付けが大きく変わり・、東芝の将来像は見通せません。
WHの買収費用は約5000億円に達しましたが、買収を決めた西田厚聡社長(当時)は「十二分に採算が取れる」と豪語しました。06年は「原発ルネサンス」と呼ばれる状況で、原油高騰や地球温暖化対策を背景に世界中で原発計画の立案が相次いでいました。
しかし、11年3月の東京電力福島第1原発事故で、国内外の原発計画は停滞。米国では安全規制が強化され、WHが建設する原発4基の費用は大幅に増加し、WHは12~13年に計1156億円の損失計上を強いられました。
それでも東芝は原発事業を「成長のエンジン」(室町正志社長=当時)に据え続け、15年末には米原発工事を加速させる目的で、WHを通じて米建設会社「CB&Iストーン・アンド・ウェブスター」を買収しました。この買収が7000億円超の損失計上の引き金となりました。
融資の継続を要請・・来月末まで 主力3行応じる方針
東芝は2月15日、米原発事業の損失などに関する取引金融機関向けの説明会を開き、3月末までの融資継続を要請しました。三井住友銀行など主力3行はこれに応じる方針を示しました。
東芝は原発事業で7000億円超の巨額損失が発生し、昨年12月末時点で負債が資産を上回る債務超過に陥るなど、厳しい状況を説明。資本増強を含む再建策も示し、銀行団に支援を求めました。
関係者によると、説明会では、主力行の三井住友、みずほ、三井住友信託の3行が、融資継続の要請に応じる方向だと表明。一方で、地方銀行を中心に内部統制を強化するよう求める声が上がったほか、情報公開が不十分との指摘もあったといいます。
東芝は、急激な財務悪化による格下げが相次ぎ、融資の前提条件となる財務制限条項に抵触。融資の一括返済を求められれば再建が困難になります。銀行団は、2月末まで融資残高を維持することでは既に合意。しかし、4~12月期決算の発表を延期するなど東芝の経営をめぐる不透明感は強く、銀行団の懸念は高まっています。
東芝株 2日で16%下落
2月15日の東京株式市場で、前日に米原発事業で巨額損失を計上すると発表した東芝の株式が大幅に売り込まれました。終値は前日比20円10銭(8・7%)安の209円70銭で、2日間の下げ幅は約40円(16%)に達しました。
東芝の経営再建への不安が広がり、個人投資家の売りが膨らみました。取引時間中には2016年4月以来、約10ヵ月ぶりに200円の大台を割り込む場面もありました。
(「しんぶん」赤旗2017年2月16日より転載)