電力会社のもうけのために労働者の命を危険にさらすのか—。日本共産党の真島省三議員は2月6日の衆院予算委員会で、原発を「公益事業」として再稼働にかかわる電力会社の業務を残業時間規制の適用除外としている政府のごまかしを告発しました。
厚労省は「残業時間限度基準」を月45時間、年360時間などと定める一方、大臣告示や、「公益上の必要性」によって厚生労働省基準局長が指定するものは適用除外とすることができる抜け道を用意。原発の定期検査にかかわる電力会社の業務も「公益事業」として適用除外にしています。
真島 公益事業とは「公衆の日常生活に欠くことのできない事業」のことだ。東京電力福島第1原発事故で原発の公益性はどう変わったのか。
塩崎恭久厚労相 事故前後で変わっていない。
真島 驚くべき答弁だ。公益性の大前提だった「安全神話」は完全に崩壊している。
真島氏は、どの世論調査でも再稼働反対が5割を超えていることや、福島原発事故費用が21・5兆円に膨れ上がっていることを指摘。残業規制の適用除外を撤回すべきだと主張しました。
厚労省は2013年11月、原子力規制委員会の新規制基準の審査にかかわる業務も、公益事業であり「集中的な作業が必要」だとして残業規制の適用除外としました。真島氏の質問に対し、山越敬一労働基準局長は、通達は九州電力の要望を踏まえて出したものだとしながら、九電以外の電力会社からは要望がなかったにもかかわらず適用除外にしたと答弁。「集中的な作業」についても(1)設置変更許可の審査(2)工事計画認可の審査(3)保安規定変更認可の審査―という三つの作業を同時に行うことだとしながら、業務の最後の一つが終了するまで適用除外は継続すると述べました。
真島氏は「支離滅裂だ」と批判。三つの許認可の最初の一つから三つ目までの期間は8から9カ月も差があり、このことだけでも長期にわたって国の判断で労働者が長時間労働を強いられていると迫りました。
真島 三つの審査業務には期限があるのか。
田中俊一規制委委員長 期限はない。
真島 田中委員長は昨年、「事業者に審査の対応を急がせたことはない」とも答弁している。審査業務を誰が急がせているのか。
厚労相 一義的には、急ぐのは事業者の問題だと考えている。
真島氏は、九電社長が一昨年6月の株主総会で「原発停止で厳しい経営状況が続いている。一日も早い再稼働を目指す」と述べていたことを紹介。もうけのために原発再稼働に突き進む電力会社のために、現場の労働者が犠牲になっていることを浮き彫りにしました。
真島氏は、日本共産党の聞き取り調査をもとに、九電や四電で適用除外期間が終了した後も限度基準を超えた長時間残業が横行していることを告発。「厚労省が電力会社の望み通りに適用除外にしてきたことが、電力会社のモラルハザードを生み出している」と批判し、九電と四電に対する調査と指導を求めました。これに対し塩崎厚労相は「新規制基準への適合性審査の業務が終了した場合は適用除外の措置は終了することになる。もしそれを破っていれば当然指導しなければいけない」と答えました。
(「しんぶん赤旗」2017年2月7日より転載)