福島地裁
東京電力福島第1原発事故の被災者ら約4000人が国と東電に原状回復と完全賠償を求めた「生業(なりわい)を返せ、地域を返せ」福島原発訴訟(中島孝原告団長)の第23回口頭弁論が1月30日、福島地裁(金澤秀樹裁判長)でありました。
原告側は、責任論、損害論などについて弁論しました。
原告代理人の渡邉純弁護士は、東京電力が「年間20ミリシーベルトを大きく下回る放射線を受けたとしても、違法に法的権利が侵害されたと評価することは困難というべきである」と主張していることに反論。「たとえ低線量であったとしても、望まない被ばく、何らの有用性もない被ばくを余儀なくされる状態におかれた住民が、被ばくによる健康影響をさけるために、避難を含む被ばく回避を取らざるを得ず、そのことによって、本件原発事故前は当たり前に享受できていたさまざまな生活上の利益を毀損(きそん)されたという事実を『包括的生活利益としての人格権侵害』にあたる」としています。
原告団は同日、金澤裁判長に公正な判決を求める約1万5000人分を超える署名を提出しました。
法廷外で開いた集会では鳩山由紀夫元首相が講演。「福島と沖縄は連帯してたたかうことが大切だ」と訴えました。
金澤裁判長は、次回3月21日に結審すると宣言。判決は年内の見通しとなりました。
大飯再稼働差し止め控訴審・・島崎氏の証人尋問決定
関西電力大飯原発3、4号機(福井県おおい町)の再稼働を差し止めた一審判決(福井地裁)を関電が不服とした控訴審の第10回口頭弁論が1月30日、名古屋高裁金沢支部(内藤正之裁判長)で開かれました。
大飯原発の基準地震動は過小評価の恐れがあるとする島崎邦彦・前原子力規制委員長代理の証人尋問が次回(4月24日)行われることが決まりました。島崎氏は委員長代理当時、新規制基準に基づく大飯原発の審査のまとめ役。これまでに、関電が地震の規模の算定に用いた手法では「過小評価になる可能性がある」とする陳述書を提出しています。
裁判所は次回の尋問を受けて次々回の7月5日の弁論で、訴訟進行の方針を示します。
今回の弁論では、福島県富岡町から茨城県に避難している女性が、避難者の現状と健康被害について意見陳述し、「政府は加害者であるはずの東電は守り、なぜ福島県民や子どもたちの権利、命を守らないのか」と訴えました。
住民側弁護団は、最新の研究から、低線量被ばくに、がん発症リスクがあることは明らかだとして、過酷事故時には原発から250キロ圏外にも健康被害が生じうることを主張しました。
(「しんぶん」赤旗2017年1月31日より転載)