当初説明から拡大
東芝の米国での原発事業の損失が最大7000億円規模に膨らむ可能性があることが1月19日、分かりました。資本の大幅な減少は避けられず、東芝は主力の半導体事業への出資受け入れを検討するとともに、政府系の日本政策投資銀行に対し、資本支援を要請します。
巨額損失の発生は米国における原発工事コストの上昇が原因。東芝は2015年末に、子会社の米原発大手ウェスチングハウスを通じ、米原発建設会社を買収。米国内で原発4基の建設を進めていたところ、想定外の費用増に直面しました。
東芝は原発損失について、当初は金融機関に1000億~5000億円と説明していました。現在、監査法人と最終的な損失額の確定に向けた協議を続けています。
一方、東芝の株主資本は16年9月末時点で3632億円。巨額損失の計上で債務超過に陥る恐れもあるため、収益の柱となる記憶用半導体フラッシュメモリー事業を分社化し、外部からの出資受け入れを検討しています。
原発推進は国と一体 政権の責任も
東芝の7000億円に上る原発事業の巨額損失は、東京電力福島原発事故以降も政府と二人三脚で原発を推進してきた果てに起きました。経営陣の責任とともに、原発を重要電源と位置付け、原発輸出を成長戦略としてきた安倍政権の責任も重大です。
東芝は2006年に米原子炉メーカー・ウェスチングハウス(WH)を5000億円で買収。これによって15年までに世界で39基の新規プラントを受注し、原発事業の売上高を4000億円から1兆円に伸ばすとしました。
しかし、福島事故でもくろみは完全に崩れます。15年に発覚した1500億円を超える粉飾決算の根底にもWHの買収費用の焦げ付きがあると指摘され、事実、16年3月期決算で東芝は原発事業で2500億円の減損を実施しました。
にもかかわらず、東芝は15年、今回の巨損の原因となる企業買収をWHを通じて実施。原発事業の巨損に苦しみながら、ますます原発の深みにはまっていったのです。
財界と一体となった安倍政権の原発推進政策が、巨大企業のかじ取りを誤らせ、ひいては日本経済の基盤を掘り崩しています。
(佐久間亮)
(「しんぶん」赤旗2017年1月20日より転載)