11月18日から22日、オーストリアのウィーンに滞在していました。
「Literature in Autumn」というスタイルの文学イベントに、辻仁成さん、中村文則さん、青山七恵さん、小山田浩子さん、ドリアン助川さんと共に招かれ、自作朗読やシンポジウムを行ったのでした。
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メイン会場のステージには「日本」という2文字と、日の丸の赤と白をデザインしたボードが設置されていました。在日韓国人であるわたしは、その前に座って朗読することに、居心地の悪さを感じずにはいられませんでした。
わたしは20年前に書いた(ドイツ語翻訳は2010年に出版された)『ゴールドラッシュ』のラストシーンの一部を朗読しました。父親を殺害した14歳の少年が、自首する前に恋人と知的障害者の兄と3人で動物園に行くシーンです。
ほんとうは、祖国である韓国に帰属することもできないし、生まれ育った日本に同化するつもりもない、どちらの民族にとっても「他者」である「在日」の在り方をお話ししたかったのですが、いかんせん時間が足りませんでした。
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しかし、別の会場で行われた3人の作家(日本側からは中村文則さんとわたし、オーストリア側からはリディア・ミッシュクルニクさんとザビーネ・ショルさん)とのシンポジウムでは、ヨーロッパと日本における排外主義と福島の原発事故の問題がテーマとなりました。
わたしは、今年7月に行われた東京都知事選で、在日特権を許さない市民の会「在特会」の元会長だった桜井誠氏が11万4171票を獲得したことを話し、「在特会」の活動内容を紹介しました。
そして、なぜわたしが福島で暮らすことを選んだのか、を話しました。
「わたしたちは、書くことで、同じ闘いを闘っている」とザビーネ・ショルさんは言いました。
2020年の東京オリンピックに向けて、東京では「国際都市化」が急がれていますが、その内実は便利さ一辺倒の改善や改革です。
今こそ、国際都市東京でヘイトスピーチにさらされている在日韓国朝鮮人の苦しみに耳を傾け、東京の明るさの裏にある福島県浜通りの「帰還困難地域」の暗闇に目を凝らすべきではないでしょうか。
(ゆう・みり 作家 写真の筆者)
(月1回掲載)
(「しんぶん赤旗」2016年11月28日より転載)