政府は12月21日、日本原子力研究開発機構の高速増殖炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)の廃炉を正式に決定しました。一方で、使用済み核燃料の再利用を目指す核燃料サイクル政策は維持し、もんじゅに代わる高速炉の開発を続けることも原子力関係閣僚会議で決定しました。
もんじゅは1994年に初臨界を達成したものの、95年にナトリウム漏れ事故を起こすなどトラブルが相次ぎ、運転はわずか250日。これまで1兆円が投じられた上、運転再開に最低でも8年間の準備期間と5400億円以上が必要だとし、政府は「運転再開で得られる効果が経費を確実に上回るとは言えない」と判断しました。
また、冷却に使うナトリウム取り扱い技術の高度化などにもんじゅを活用。周辺地域を高速炉研究開発の中核的拠点の一つにし、将来的にもんじゅの敷地に新たな試験研究炉を設置するなどとしました。
ただ、廃炉には約30年で3750億円以上の費用がかかると試算されているほか、原子炉の冷却に使ったナトリウムの処理などの課題があります。
原子力関係閣僚会議に先立って開かれた政府のもんじゅ関連協議会の終了後、福井県の西川一誠知事は、記者団に、廃炉方針について「容認はしていない」と述べました。
解説・・新実証炉 国費の無駄
日本原子力研究開発機構の高速増殖炉「もんじゅ」(福井県)の廃炉を政府が決めました。原発の使用済み核燃料を再処理してプルトニウムを取り出し、核燃料として再利用する「核燃料サイクル」の中核施設がもんじゅです。初臨界から20年以上経過しながら稼働は250日。出力も最高で40%。これまでに1兆円以上の国費を費やしました。高速増殖炉の失敗と核燃料サイクルの破たんは明らかです。
もんじゅの安全性は、1995年のナトリウム漏れ事故以前から、多くの疑問が出され、大小のトラブルが事故前も事故後も繰り返されました。廃炉の決定は遅きに失したといえます。
しかし、政府は失敗の原因を総括しようとはしていません。政府は、「技術的な内容」には問題はなく、マネジメントに問題があったとしています。しかし、原子力機構には運転資格がないとして運営主体の交替を求めた原子力規制委員会の勧告に対し、文部科学省が設置した有識者検討会は具体的な運営主体を決定できませんでした。にもかかわらず政府は、今後の開発に「教訓を活用する」と裏付けもなしに述べています。
もんじゅは基本技術を確認する実験炉「常陽」に続く原型炉段階。性能や安全性の確認をし、発電技術の確立が目的でした。ところが政府はもんじゅ失敗の検証もせず、新たな高速炉開発方針で、原型炉の次の段階である、経済性を確認する実証炉の開発を目指す方針を決定しました。
今回の方針は4回の高速炉会議で決定されました。メンバーは、もんじゅを所管する文科省や原子力機構、高速炉の中核企業に位置づけられた三菱重工業、経済産業省、電気事業連合会と利害関係者ばかりです。
政府は、核燃料サイクルの推進を大前提に、高速炉の必要性を繰り返しますが、核燃料サイクルそのものを断念すべきです。技術的な妥当性の検討もせずに新たな実証炉開発に突き進むのは、もんじゅの二の舞いとなり、国費が無駄に投入されかねません。
(松沼環)
(「しんぶん赤旗」2016年12月22日より転載)