廃炉費3750億円
政府は12月19日、福井県敦賀市にある日本原子力研究開発機構の高速増殖炉「もんじゅ」を廃炉にする方針案を、同県の西川一誠知事に伝えました。知事は「拙速感が否めない」と述べ、詳しい説明を要求。松野博一文部科学相は改めて説明の場を設けると約束しました。
また、政府の高速炉開発会議(議長=世耕弘成経済産業相)は同日、もんじゅの廃炉後も高速炉の開発を国、メーカー、電気会社、研究機関が連携した体制で進めるとする「高速炉開発の方針(案)」を取りまとめました。近く原子力関係閣僚会議に提出されます。
もんじゅ計画失敗の総括は全くないまま、核燃料サイクル路線、高速炉の実現を掲げています。
方針では、使用済み核燃料からウラン、プルトニウムを取り出し再利用する核燃料サイクル推進の基本方針のもと、高速炉開発の意義を強調。今後10年程度の開発作業を特定する「戦略ロードマップ(工程表)」を、開発会議のもとに設置する「戦略ワーキンググループ」で2018年めどに策定するとしています。
また、もんじゅを再開しなくても後続炉となる実証炉開発に必要な知見は、フランスの高速炉「ASTRID(アストリッド)」への協力などを通じて得られるとしています。実験炉「常陽」(茨城県)の再稼働に向けて積極的に取り組むとしています。この日の開発会議で、もんじゅの廃炉費用は、30年で3750億円以上との試算が示されました。
同会議は、経産相のほか、文科相、高速炉開発の中核企業と位置付けられている三菱重工業の宮永俊一社長、勝野哲電事連会長、元三菱重工副社長の児玉敏雄原子力機構理事長がメンバーです。
高速炉
炉心の冷却に水ではなくナトリウムなどを使うことで、中性子を減速させずに高速のまま核分裂の連鎖反応を引き起こさせるタイプの原子炉。消費した以上のプルトニウムをつくることができるとされる高速増殖炉は、高速炉の一種。フランスの高速炉「ASTRID」は放射性廃棄物対策を主な目的としており、プルトニウムの増殖はしません。
(「しんぶん」赤旗2016年12月20日より転載)