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原発ゼロの日本へ㊤ 再稼働路線破たん・・設備・監視態勢の脆弱ぶり明らか

 日本共産党第27回大会決議案は、安倍政権の原発再稼働路線の行き詰まりと、その矛盾がさまざまな形で噴き出していることを示し、原発輸出や再稼働路線を中止して「原発ゼロの日本」に本格的に踏み出すしかないことを明らかにしています。さらに、その決断と一体に再生可能エネルギーの飛躍的普及をはかり、2030年までに電力需要の4割を賄う目標を持って実行することを提唱しています。

制御不能の汚染水

 事故後の廃炉作業が続く東京電力福島第1原発では12月4~5日にかけ、人為的ミスによって核燃料プールの冷却と原子炉注水が停止するという事態が相次ぎ、設備や監視態勢の脆弱(ぜいじゃく)ぶりが明らかになりました。

 放射能汚染水は1日当たりおおむね300トン発生し、総量は現在100万トンを超えました。汚染水に含まれる放射性物質トリチウム(3重水素)は、現在の技術で除去は困難。高濃度のトリチウム汚染水(現在約70万トン)の処分方法をめぐり、海洋放出などが検討されていますが、地元福島県の漁業関係者は強く反対しています。

 汚染水発生を抑制するため1~4号機周囲の地盤を凍らせる「凍土壁」(陸側遮氷壁)に国費約345億円を投入。3月から運用を始めました。東電は凍土壁の海側か「完全に凍結」といいますが、汚染料取り出しは完了したものの、3号機でようやく取り出し設備の設置が始まったばかり。高い放射線量に阻まれ、1~3号機の原子炉格納容器内の溶け落ちた核燃料(デブリ)の状態は把握できていません。

 福島県民が廃炉を求めている福島第2原発でも11月月22日の福島県沖地震によって、使用済み核燃料プールの水があふれ、およそ1時間半にわたり冷却が停止しました。

 安倍首相がいう「コントロール」とは程遠い状態が続き、廃炉が完了するまで何年かかるのかわかりません。このような状況で、原発再稼働は絶対に許されません。

地震動の過小評価も

既存原発の存続を前提とした新規制基準を安倍首相は「世界最高水準」と持ち上げていますが、その実態は重大事故対策でも地震・火山対策でも世界水準とは、程遠いものです。4月に発生した熊本地震は、そのことを鮮明に示しました。基準の欠陥を一層あらかにしました。

 原子力規制委員会の前委員長代理、島崎邦彦東京大学名誉教授は、今年6月、規制委の田中俊一委員長にたいし、熊本地震のデータに基づき従来の審査方式では大飯原発などで想定すべき地震の揺れ、「基準地震動」の過小評価する恐れがあると指摘、見直しを求めました。

 綴織(こうけつ)一起東京大学教授も、大飯原発の基準地震動の策定にも使われている方法で熊本地震を計算すると「実際の地震の規模の8分の1」だったと、現行の方式では過小評価となることを明らかにしています。

 しかし規制委は、基準地震動の計算手法を見直す姿勢は示していません。

熊本地震では、大きな揺れが繰り返し同じ地域を襲いました。原発の耐震性について、大きな揺れが繰り返される危険性を考慮していないことが問題になりました。原子力災害対策指針では、原発から5~30キロ圏内は、屋内退避を基本としています。揺れが繰り返す中で、屋内退避は現実的でないと指摘されています。

出口なき核のゴミ

 電力会社と政府は、国民世論を無視して原発の再稼働を推し進めていますが、多くの原発で、使用済み核燃料プールの容量が切迫しています。原発を再稼働すれば、使用済み核燃料がさらに増えます。

 11月に3、4号機が新規制基準に適合したとする審査書案が示された九州電力の玄海原発では、3、4号機が再稼働すると5年ほどで使用済み核燃料プールが満杯になります。燃料交換ができなければ、稼働を続けることはできません。

 政府は、原発の使用済み核燃料を再利用するという「核燃料サイクル」に固執しています。しかし、サイクルの要に位置付けられた高速増殖炉「もんじゅ」(福井県)は廃炉に追い込まれました。

 また、使用済み核燃料は青森県六ケ所村の再処理工場に運ばれ、再処理され、ウランとプルトニウムを取り出す予定でしたが、再処理工場は、完成が23回も延期されています。しかも六ケ所村のプールにはすでに全国からの使用済み核燃料が運び込まれており、満杯に近い約2900トンになっています。

 たとえ再処理工場が稼働できたとしても、取り出されたプルトニウムは増え続け、そこで発生する高レベル放射性廃棄物(「核のゴミ」)の行き先は決まっていません。政府は、「核のゴミ」の処分地を決める際、これまでの自治体から申し出を待つ方式から。「科学的有望地」として上から押し付けようとしています。

再稼働反対は多数派

 なにより国民世論が、原発の再稼働の前に立ちはだかっています。

 7月、九州電力川内原発が立地する鹿児島県知事選で、「川内原発の停止」などを公約に掲げた三反園訓(みたぞの・さとし)氏が現職を大差で破りました。

 10月には、東京電力柏崎刈羽原発が立地する新潟県で、野党と市民の統一候補・米山隆一氏が勝利し、「原発再稼働は認めない」との県民の明確な審判が下されました。

 どの世論調査でも再稼働反対が5割を超えています。福島原発事故を体験し、原発再稼働反対は、揺るがない国民世論の多数です。(つづく)

(「しんぶん」赤旗2016年12月18日より転載)