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廃炉・賠償費 国民に押し付け・・賠償2・4兆円「託送料金」上乗せ/福島原発事故 経産省会議「中間とりまとめ」了承

 大きく膨らむとされる福島第1原発事故の廃炉・損害賠償費用や、それ以外の原発の廃炉費用の一部をさらに国民負担にする問題を検討してきた経済産業省の有識者会議は12月16日、「中間とりまとめ」を了承しました。今後、国民への意見募集(パブリックコメント)にかけられます。

 「中間とりまとめ」の主な内容は①福島第1原発の賠償費用は、大手電力会社が所有する送電網の使用料(託送料金)に上乗せして回収する②事故炉の廃炉費用は、東電の送配電事業での利益(本来は消費者への還元分)を優先的に充てる③他の原発の廃炉について事業者を優遇する廃炉会計制度を維持するために託送料金の仕組みを利用する―いずれも原発を持たない「新電力」と消費者に新たに負担させるものです。

 また、その「見返り」として、大手電力会社が保有する「安い」原発などの電気を供出する市場(ベースロード減などを図るとしています。賠償費用では本来事故前に備えておくべきだった分を「過去分」として、今後40年にわたって2・4兆円を「託送料金」に上乗せするとしました。

 1人の委員から「廃炉など発電出来のものは発電会社が負担すべきもので託送料金に含めるべきでない」などの意見が出された以外は、「やむを得ない」「これでやるしかない」など。“思考停止”のような発言が続きました。

市民電力連絡会会長 竹村英明さん

  自由化の下「東電救済」

市民電力連絡会会長 竹村英明さん

 「中間とりまとめ」は、ひとえに「自由化の下での東電救済」であることが見えてきた。

 原発事故対策のための「過去分」負担なるものが登場する。事故後にできた原子力損害賠償・廃炉等支援機構が、原子力事業者10社から納付させている「一般負担金」を〝本来は事故前から集めておくべきものであった″という「気づき」の結果らしい。「安全神話」に立脚して、原子力損害賠償法の保険金額を、現実に(現在までに)発生した事故対策費用の500分の1に設定し、「原発は安い」と豪語していた反省もない。

 この「一般負担金」を発電会社ではなく送配電会社に負担させ、すべての「新電力」、つまり全消費者負担にしてしまおうというのだ。1キロワット時あたりにすると金額はわずかだから大目にみてよと言うことらしいが、ルールを壊したら、後には大きな代償が来る。

 この後に本題がある。東電の廃炉対策8兆円の消費者負担だ。「東電の総力を挙げ」という言葉のマジックにより、発電部門ではなく送配電部門に負担させる。送配電部門が利益を上げたら、託送料金(送配電網の使用料)を下げるのではなく廃炉対策に使っていいよというものだ。実質的負担は新電力であり、その消費者である。

 8兆円では済まず、とんでもなく負担が膨らむ可能性がある。

 損害賠償も除染も中間貯蔵もすべて税金と消費者に負担を押し付けてきた東電は、これで廃炉対策までも消費者に押し付ける。これが「中間とりまとめ」の真髄だ。

(「しんぶん」赤旗2016年12月17日より転載)