日本の原発の半分が集中する北陸信越ブロック(長野、新潟、富山、石川、福井)。2014年12月、木島日出夫さん以来、11年ぶりの日本共産党衆院議員として当選した藤野保史さん(46)の初質問は、原発問題でした。
「『原発はいらない』という北陸信越のみなさんの声をまっすぐに届けたいと思ったから」。同時に福島原発事故以降の議員として、この問題を取り上げるのは使命だと感じています。
若狭湾(福井県、京都府)の原発集中立地による同時多発事故の危険性を取り上げた初質問(予算委員会)には、北陸信越の住民が傍聴席に詰めかけ励みになりました。民主党(当時)議員など野党からも「いい質問」「論理的だ」と応援の声がとびました。
全原発を調査
この2年間、原発に関する質問は30回超。北陸信越の全原発をこの目で見て、全立地自治体で住民や商工会、漁港関係者などとひざを交え懇談を重ねてきました。
関西電力大飯原発(福井県)5キロ圏内の漁港関係者との懇談では、「福島をみると原発はないに越したことはない」といわれました。その地域は大事故が起こった時、1本の橋を通って避難しなければならない場所にあります。「自分は漁師だから船で海に逃げることができるが、集落の人間は…」と。
3・11以降、立地自治体の中からも原発はないほうがいいと思いつつも、「なくなったらどうなるんだろう」との不安も抱えていることを聞き取ってきた藤野さん。今年4月の経済産業委員会では原発の“経済神話”をとりあげ反響をよびました。
世界最大の発電量を誇る東京電力・柏崎刈羽原発(新潟県)の地元企業への聞き取りをまとめた地元紙の特集記事を紹介。藤野さんは、原発停止約4年間で売り上げに影響がないと回答したのが1000社中3分の2を占めていたことを指摘。
その上で、廃炉に向かう自治体支援策を抜本的に強めるよう求めました。一つは「エネルギー構造転換理解促進事業」についでです。廃炉される原発の立地自治体を支援する重要な制度なのに専任職員が2人しかいないと指摘し、予算と体制の拡充を提案しました。
経験を生かす
もう一つは、石炭から石油への転換を国策として進めたときの経験を生かすことです。40年にわたる産炭地域対策の中で4兆円の国費が投入されましたが、その多くは大手石炭会社に回り、地域の労働者に対する予算は限られていました。原発からの転換を図るときは、地域社会や労働者にプラスになる工夫を求めました。
今年はチェルノブイリ事故から30年、福島事故5年の節目。衆院委員会の視察で初めてチェルノブイリを視察しました。その光景が印象に残っています。同原発の周辺には放射能マークのついた棒が点々と立っていました。
「当時そこに家があり、事故後解体し地面に埋め込んでいるというんです。家族の営みが一瞬で奪われ、今や標識だけという姿を見て慄然(りつぜん)としました」
原発と人類は共存できない、再生可能エネルギーに転換しなければならないと強く感じました。
(つづく)
(「しんぶん」赤旗2016年12月14日より転載)