2011年の東京電力福島第1原発事故に伴い、避難指示区域以外から避難した「自主避難者」への住宅無償提供が来年3月末で打ち切られようとしており、避難者が継続を求めて運動を続けています。
Q 自主避難とはどういうことですか。
A 法律や制度で明確な定義があるわけではありません。
政府は福島第1原発事故に伴い、原発から20キロ圏内の区域、年間の積算放射線量20ミリシーベルト(毎時3・8マイクロシーベルト)を超す区域を避難区域に指定しました。それ以外の区域から避難した人たちが一般的に自主避難者と呼ばれています。
当事者からは、20ミリシーベルトの線引きは高すぎ、自主避難という表現はあたらないという批判が出ています。
福島県の自主避難者について、県は津波被災者との区分けをしていないので正確な数は分かりません。両方で約1万2500世帯(2015年10月時点)としています。
Q 自主避難者への住宅無償提供は、どういう措置で、なぜ打ち切られようとしているのですか。
A 国は福島第1原発事故後、福島県全域を災害救助法の対象に指定し、自主避難者にも仮設住宅(民間借り上げ住宅も含む)が提供されることになりました。同法の実施主体は県で、財源は国が負担します。仮設住宅は基本は2年。その後1年ごとの延長が続いてきました。
県は2015年6月に住宅無償提供打ち切りを決定しました。理由について「除染も進み、災害救助法の要件に合わなくなっている。普通に暮らしている人が多い」と話しています。県の調査で住宅提供打ち切り後の住居が未定、未確認の人は20・8%(11月15日
時点)。県は提供打ち切り後に、県の財源で公営住宅入居基準を若干上回る世帯を対象に2年間限定で2万~3万円の家賃補助を行います。
国は「復興加速化」の名の下で、帰還困難区域を除く区域の避難指示解除を来年3月末までに行う方針。今回の住宅無償提供打ち切りも国の方針と足並みをそろえたものです。
G 住宅無償提供打ち切り反対運動は広がっているのですか。
A 昨年から自主避難者が国会で院内集会を開くなど運動が始まり、この間、県庁前アピール行動が連日行われ、12月4日には原発事故被害に取り組む4団体共同の全国集会も開かれました。
東電からの継続的な賠償がない自主避難者にとって住宅無償提供は命綱ともいえるものです。「母子は避難、父は福島で仕事」という家族が多く、二重生活で、それでなくても経済的困難を抱える避難者にとって、住宅提供打ち切りは大打撃になります。集会では「加害者、東電には多額の税金、被害者には当たり前の税金を使わないというのは不条理だ」との指摘も出ました。
福島県からの避難者が多く暮らす山形県では吉村美栄子知事が8月、内堀雅雄福島県知事に無償提供継続を要請。9月に山形市、米沢市で「延長を求める会」が発足、11月には中川勝米沢市長が福島県に要請しました。県弁護土会も15年6月に、打ち切り撤回を求める会長声明を発表しています。京都府議会は16年7月、「十分な復興にはまだまだ時開かかかる」として継続を求める意見書を可決。北海道議会も請願を採択。市町村レベルでは35自治体が継続意見書を可決しています(福島県調べ)。
(「しんぶん」赤旗2016年12月11日より転載)