政府は11月30日、廃炉を含め今後の対応を検討中の高速増殖炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)の後続炉となる「高速実証炉」の開発方針を示しました。もんじゅ計画が失敗したことへの総括はなく、核燃料サイクル路線に固執しています。
開発方針は、政府の「高速炉開発会議」(議長=世耕弘成経済産業相)・第3回会合で骨子案が示されました。年内にも原子力関係閣僚会議で基本方針を決める予定といいます。
骨子案では、使用済み核燃料からウラン、プルトニウムを取り出し再利用する核燃料サイクルの推進と高速炉の研究開発に取り組む方針を堅持することを再確認しています。
開発方針を具体化する「戦略ロードマップ(工程表)」を2018年めどに策定。原型炉「もんじゅ」の後続炉となる実証炉について「今後10年程度」の開発作業を特定し、施設設計の決定に開発資源を集中投入するとしています。
高速炉開発の技術課題については、203O年代に運転開始をめざすというフランスの高速炉「ASTRID(アストリッド)」への協力を含めた国際ネットワークや実験炉「常陽」(茨城県)などの活用で、もんじゅを再開しなくても必要な知見は得られるとしています。
開発方針の骨子案
▽核燃料サイクルを推進し、高速炉の研究開発に取り組む
▽戦略ロードマップ(仮称)の策定作業を2017年初頭から開始し、18年めどに策定
▽実証炉の炉型・出力の確定など今後10年程度の開発作業を特定
▽もんじゅ再開で得られる知見は、高速炉開発での国際協力などで入手可能
高速炉 炉心の冷却に水ではなくナトリウムなどを使うことで、中性子を減速させずに高速のまま核分裂の連鎖反応を引き起こさせるタイプの原子炉。消費した以上のプルトニウムが作れるとされる高速増殖炉は、高速炉の一種。政府の核燃料サイクル計画は、ふつうの原発(軽水炉)の使用済み燃料を再処理し、プルトニウムやウランを取り出して高速増殖炉で利用し、プルトニウムを増殖させるというもの。フランスの高速炉「ASTRID」は放射性廃棄物対策を主な目的としており、プルトニウムの増殖はしません。高速炉による核燃料サイクルは、燃料の利用効率を飛躍的に高めるとしたこれまでの説明は破たんします。
(「しんぶん」赤旗2016年12月1日より転載)