石炭火発 パリ協定逆行・・衆院委 塩川氏、政策転換迫る
衆院外務委員会は11月2日、地球温暖化対策の新たな国際枠組み「パリ協定」の承認案を全員一致で可決しました。それに先立ち日本共産党の塩川鉄也議員は、安倍晋三政権がトップセールスで推進している石炭火力発電輸出が「パリ協定」に逆行していると批判し、政策転換を迫りました。
石炭火発は他の火力発電と比べても極めて大量の温室効果ガスを排出します。
塩川氏は、米国の石炭火発輸出への公的金融支援停止の呼びかけに欧州各国や世界銀行が同調したことや、経済協力開発機構(OECD)も不十分ながら規制に踏み出した脱石炭の流れを紹介。石炭に固執する日本の異常さを指摘しました。
塩川氏は、安倍政権が温暖化対策の柱の一つとする2国間クレジット制度(JCM)について質問。同制度は、日本が技術や製品を提供して減らした他国の温室効果ガスの排出量を日本が排出枠として得る仕組みです。
塩川氏が、政府としてJCMに大規模石炭火発を含める考えなのかとただしたのに対し、高木陽介経済産業副大臣は「大規模でも可能」と明言。パリ協定のルールづくりでも大規模石炭火発のJCM化を求めていく考えを否定しませんでした。
塩川氏は「温暖化対策の足を引っ張るものだ」と批判。2013~15年の石炭火発のトップセールスが23件に上ることも答弁で明らかにし、「世界に逆行している。石炭火発推進政策を転換すべきだ」と迫りました。
(「しんぶん赤旗」2016年11月4日より転載)
温暖化対策 新枠組み
パリ協定 きょう発効
【パリ=島崎桂】2020年以降の地球温暖化対策の国際的枠組みとなる「パリ協定」が11月4日、発効します。温暖化対策に新興国や途上国も参加する初の協定となります。
パリ協定は、昨年末にパリで開かれた国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)で採択したもの。産業革命後の世界の気温上昇幅を2度未満に抑え、1・5度未満を目標としています。併せて、今世紀中に温室効果ガス排出の「実質ゼロ」(森林や海洋による吸収量が排出量を上回る状態)を目指します。
温室効果ガス排出量上位2カ国の中国、米国をはじめ、2日時点で92カ国がパリ協定を批准・承認し、早期発効に貢献。第5位の日本政府は4日にも承認する見通しです。
各国市民・環境団体は、採択から約11カ月、国際条約としては異例の早期発効を歓迎しています。
国際環境NGO「気候ネットワーク(CAN)」は声明で、「気候変動対策で決定的な役割を果たす意志と野心を示した」と評価。同時に「すでに世界中の人々が気候変動の被害を受けている」として各国に迅速な対応を求めました。
国際エネルギー機関(IEA)の発表によると、世界の発電量に占める再生可能エネルギーの割合は昨年23%に達し、過去最高を記録。昨年新設された発電所の9割が再生エネを電源とするなど「脱化石燃料」「脱炭素」の動きは加速しています。
一方、日本は主要7カ国(G7)で最も承認が遅れたほか、石炭火力発電への大規模な公的支援を継続。2030年の電源構成でも石炭火力を26%に設定するなど対応の遅れが顕著です。期待される技術の開発や移転、資金拠出と併せ、政府の抜本的な対応強化が必要です。
モロッコのマラケシュで7日開幕するCOP22では、パリ協定の目標達成に向けたルール作りを議論します。
パリ協定骨子
▽世界の平均気温の上昇を産業革命以前より2度未満に抑え、1・5度に抑える努力をする
▽今世紀後半に人為的な温室効果ガスの排出を実質ゼロにする
▽すべての国が削減目標を自主的に作成し、達成に向けた国内対策をとる。目標は5年ごとに提出・更新する
▽世界全体の実施状況を5年ごとに点検する
▽先進国は資金援助を継続し、途上国も自発的に資金援助をおこなう
(「しんぶん赤旗」2016年11月4日より転載)